第十一幕 ①
ついに、公演の日を迎えた。
演劇部にとって、春の文化祭に次ぐ大きな行事だ。市民会館の会場を貸し切って、行われる合同演劇祭。市内の別の高校と合同で行われるものだ。
侑歩たち演劇部員は、前日からリハーサルをして、今日の公演会に臨んだ。補助部員の香月奈緒と未来も、受付として駆り出され、部員の出演がない午前中から会場に入って詰めている。
客の入りは上々だった。演劇部員の家族や関係者だけでなく、毎年この公演を楽しみにしてくれている地域の人たちも来てくれていた。
未来は午前中ずっと受付にいた。侑歩たちの公演が始まる午後に、他校の生
徒と交代することになっている。
この公演に向けて制作してきた、衣装や舞台装置も何とか間に合った。未来にとって初めての部活、そして舞台。本来なら、もっと気分は高揚していたはずだ。けれど、未来の心は沈んでいた。
未来の誕生日から一週間。未来の告白を聞いても、洋司は普通に接してくれていた。未来にとっては、却ってそれが切なく、申し訳ない。そして、侑歩に対しても、結婚していることを隠していることが辛かった。
未来はそんな気持ちの暗鬱さを押し隠して、来場者に笑顔で対応した。午後になって、受付を交代すると、奈緒と一緒に清陵高校にあてがわれた座席に座って演劇部の舞台を見た。舞台監督の侑歩は、部員たちと一緒に舞台袖に行っているようだ。一緒に裏方をしていた何人かの女子が座席に残っていた。男子は舞台装置を動かしたりするのに駆り出されているらしい。
舞台が暗転して、劇が始まった。
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