第七幕 ②
未来は、侑歩に何も言わなかった。けれど、あのキスから、未来と侑歩はお互い何も言わないまま、時々一緒に過ごすようになった。
お昼休みや部活のない放課後を一緒に過ごす。一緒にいて、何をするわけでもなかった。それぞれに好きなことをして、とりとめのない話をするだけで終わることもあった。
それでも、多分、一緒にいたかったのだ。一緒に過ごす時間がほしかった。
昼ご飯を一緒に食べ、手を繋いだまま、誰もいない空き教室の隅に並んで座る。それだけ。それだけで、気持ちが満たされる。
時々、キスをした。時には何度も何度も、唇を重ねる。重ねる度に、言いようのない気持ちが未来を満たした。
放課後、侑歩と階段でしたキスは、未来にとって二度目のキスだった。一度目は、ウェディングドレスを着て、洋司と写真を撮った時だ。カメラマンから自然なポーズをするように言われ、頬にキスされた。驚いて見上げる未来に、微笑んだ洋司がほんの一瞬だけ、唇を重ねたのだ。
その時は、本当に恥ずかしくて、けれど、憧れていた人との初めてのキスに、嬉しさも感じた。
今、侑歩としているキスは、もっと熱に浮かされ、感情のコントロールがきかなくなる類いのものだ。会わない方がいいのに会わずにはいられず、触れずにもいられない。秘密を共有するかのように、未来と侑歩は、お互いの熱に溺れた。
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