第22話

河原で膝を抱え座っている。

顔を伏せ、泣いている。


さっき板を担いだときに肩の皮が擦り剥けた。

ヒリヒリして痛いんだ。

だって素肌だったんだよ。


異世界転移ってヒーローとか勇者になれるんじゃないの?

馬。ちょっとコッチに来てオレを慰めろよ。



シアンさんがやって来た。

「タケシ。お家に帰りたい??」

「え?」


シアンさんはオレの手を引き、馬車の所まで引っ張っていく。

馬が来て、馬車が繋がれ、御者台にシアンさんが座る。


オレは後ろを向いて荷台で膝を抱える

「戻りましょう」

馬がゴロゴロと馬車を引いていく。



ハイ。花畑に着きましたよ。

知ってたし。最初から知ってたし。


降ろす荷はない。

シアンさんは家(痕跡)に向かい

ドアを開ける振りをして入っていく。


オレは掛けてある幌を片付ける

一人じゃ幌をかけられないけど、シアンさんは夕食の支度なんだ。

馬が鳴いた、繋げたままだったワ。



馬を放すとヒーラーさんがとんできた。

馬の腰の所にちょこんと乗っている。


馬がオレの顔をじーーっと見ている。

「何だよ」

「ジーーーーー」

「何だよ」


フッと目をそらし、林の中に入って行く。

ちょっと忘れただけじゃんか。

・・・ゴメン。



テーブルの上でランタンの光が揺れている。

今日の夕食は「芋団子」と「豆のスープ」

昨日の団子はうまかったなぁ・・・

思わず声に出そうになった。ヤバ。


「シアンさん。耳の長い人って居るのかな?」

「耳?どんなふうに?」

「ヒュッってこんなふうに」

手振りで説明する。

「それ・・・・・」


「それ、魔物よ。どこで見たの?近くにいるの?」

「いや、そうじゃない。落ち着いて」

「殺されちゃう・・・」

シアンさんががくがく震える


「夢。夢の中に出てきたんだよ。だから落ち着いて」

「夢・・・」


「だけど、何でそんな夢見たのよ、タケシ、魔物知ってるの?」

「いやいや、魔物は見たこと無い。シアンさん、エルフって知ってる?」


「エルフ?知らないわ」

「地球のお話に出てくるんだ、現実には居ないよ」

「お話に出てくる・・・・チキュウの」

「森に住んでて、すごく長寿でいつまでも若い姿なんだ、で、みんな美形で・・・」

「タケシさん。なんで食事時に後宮のお話なんかするんです?そういうのは常識知らずです」


「ハイ・・すみません」

とんだヤブヘビになっちまった。

あれは魔物なんだ。魔物じゃないよな?

ま、夢の中話だし。


珍しくヒーラーさんがやって来た。

シアンさんの指を掴んでる。


シアンさんが林の中に入っていった。

お花摘みかな。

花畑はそっちじゃないですよ。



「タケシ、ちょっと来てくれる?」

戻ってきたシアンさんが、オレを林に連れて行く。


馬に何か有ったのか!

馬に歩み寄り、鼻先に触れてみる。

「息は荒くないよな」

「タケシも何か解るの?」


「いや、シアンさんやヒーラーの様子で、馬に何か有ったのかな、って」


「そっちじゃないの。腰のほう」

「怪我してるのか?」


「ヒーラーが、疲れてるって・・・」

「疲れ?」

んなもん寝れば治るんじゃね?

オレだって疲れてるワ。



馬の腰に手のひらを当ててみる

「オレ、人間専門なんだけど」


動物専門だって、こんな生き物知らないだろう。


指で押してやる。肘を使ったほうが良いか。

ツボを探し、ここだろうかと思う場所を押していく

「ムフーン。ヒャフーン。」

馬。変な声出すなよ。


ヒーラーさんが木に登っていった。

もう大丈夫ってことかな?


「タケシ・・・」

じっとりした目でオレを見つめてくる


わかったよ。

シアンさんをお姫様抱っこして、ドアを開けるふり、をしてベッドに運んだ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る