第23話

チュンチュン。

ピョンピョン。       シャクシャク。


顔の上に跳ねてきたバッタと、ヒーラーさんの食事で目が覚めた。

ベッドの横には馬が居た。


家の中とは言え屋外だ。虫やら馬やら入ってくるのは当然だ。


トイレに行くふりをして壁をすり抜け、林の中で用を足す。


今日は橋が渡れるかな?大イベントに参加した充実感に

心満たされるような気がする。


シアンさんも目を覚ました。

ベッド(食料箱)に座り、ヒーラーさんとチュッチュしてる。

心満たされる光景だ。


今朝の朝食は「芋団子」と「水」だ。ちっちゃい皿は「塩」かな?。

テーブルに付くと、シアンさんオレの顔を見ている。

「シアンさん。・・・これ・・・」


ムフ。

「卵ですね。」


「そう、昨日牧場の人にもらったの」

シアンさんは卵を手に取り、上目遣いでオレを見る。


オレは、卵を手に取ると、テーブルでクルクルッと回してみせる。

「こうやると、生かゆで卵か解るんだ」

勝ち誇ったように薄笑いをうかべ、クールに卵の殻を割る。

コンコン、テーブルにぶつけるが割れない。

ゴンゴン。割れない。


シアンさん、馬の角を使って上手に殻をむいていた。

馬の角を使うのか。

「おい、馬」

馬が、ベッドの方に離れていく。

「おい、馬!」


馬は戻ってくると、テーブルの上に木の棒を置く。

17,8cmくらいの長さで、3,4cmくらいの太さ。両端はなめらかに丸くなっている

握り心地は割といい。


これで卵割れって言うのか?

シアンさんを見ると赤くなって下を向いている。


コンコン。ゴンゴン。

叩いて見るが割れる気がしない。

アレのような棒をテーブルに置き、シアンさんを見る。

「これ、どうやって使うの?」


ヒーラーさんがテーブルに上がると、その棒を抱えると

テーブルに付いたオレの手の甲をグリグリやり始めた。

グリグリ。グリグリ。


「あ、そういうことね。昨日のマッサージはちょっと物足りなかったか」

うん。この棒、意外といいかもね。

「これなら、気持ちいいツボに届きやすいぞ」

馬がフンフンと言っている。ヒーラーさんも得意げなゴブリン顔だ。

シアンさんは湯気を吹いている。


「馬の角ってこうやって使うのかぁ」

ゆでたまごはおいしいね。



さて、始めましょうか。

食事を終え、荷物の積み込みです。

シアンさんちょっと雑ですよ、幌がないから積み込みが楽だ。


さっきの棒を毛布に隠してるけど何で?

積み込みは二人で協力しながら、あっという間に終わった。

幌は掛けずに畳んでロープを掛ける。


「また、お引越しね」

返事をする必要はないだろう。


「馬、行くぞ、今日も元気か?」

馬は大きく頷くと、川までの道をゴロゴロと進む。


途中で、ゆで卵を出す。。

馬の角で殻を割る。

鼻先で食べるのも嫌なので御者台に戻る。

馬車を出し、食べながら進む。


もう一つ出す。

馬を止め、角で殻を割り、御者台に戻る。

ゆで卵って、面倒くさい食べ物だ。


日も傾いた来た頃、騒ぎの音が聞こえる。

広場では祭りの宴がたけなわだ。


焚き火を焚き、流木で櫓が建てられている。

宮殿の牛がやって来ている。

手に持ったコップは馬乳酒だろう。


近づくと大げさに両手を広げハグを求められる。

「酒臭い」

隣りにいた、エプロン掛けた牛のおばさんもハグしてくる。

手が短くてオレの背中に回っていない。


「この度は、大変お世話になりました。ありがとうございます」

「いや、おめでとさん。おめでとさん。えらい仕事ができたわー。みんなようがんばって

こんな立派なもんが出来るなんてなぁ」


日は暮れていて橋は見えないが、完成したということだろう。

大きな仕事を完遂した喜びに破顔で杯を掲げる。

「さぁコッチ来て飲みなはれ」

焚き火のそばに座らされ、やってくる人たちと笑顔と盃を交わし合う。

櫓の周りには踊りの輪が出来、カンカンと丸太を叩くリズムと歌声が響く。


大皿で回ってきたのは「鶏のもも焼き」だ、シアンさんが大皿を受け取りオレは「もも焼き」

を二本手に取る。大皿は次に回され、シアンさんに一本渡しつつ、かぶりつく。


「ウマイーーーー!」

久々の「肉」の味わいに思わず喚声を上げてしまう

周りの人が笑ってる。シアンさんも笑ってる。

「オレも歌うぞ」


バンバンバンバン〇〇焼いても家焼くな♪。

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