第21話

山の端の空が色づいている、もうすぐ夜明けだ。

広場の熾火に歩いていくと、もう何人かの人が起きていた。


「おはようございます」

「おはよう。腹減ったかね?」


ニコニコと空腹の心配をしてくれるおばさん。

「よく寝られましたか?」

「なんだかうきうきしちゃってね、寝られなかったよ」


笑顔を交わし、顔を洗いに川辺に降りる。

牧場の馬が何頭か水を飲んでいる。

飲みながら小便をしている。

「なんだこいつ。」

川上にまわり、顔を洗っていると、男に声をかけられた。



「旅の人よ。こりゃぁ山津波だなぁ、えらいことだ。あんたがた、広場に居たのか?」


「えぇ。たまたま川を見に来たら、水が減っていたんですよ」


「そういうもんだ。よく助かったなぁ」


「馬が教えてくれたんです」


「ウン」

おじさんは大きく頷いた。



シアンさんも起きてきたようだ。

「おはよう、よく寝られた?」

なぜか顔を赤らめる


「寝れるわけないじゃない・・・」

寝てただろ。


「馬たちが動き始めたから、寒くなっちゃって」

寝てたんじゃないか

 

「旅の人、ちょっと手伝って貰うからこのへんで待っててくれ」

おじさんは広場の方に戻っていった


馬よ、もう少し優しくしてくれないか。

おじさんと馬が戻ってきて作業を始める。

馬が流木をころがし、おじさんはのこぎりを使う。

オレはナタで細い枝を払う。


「この辺を片付けておかないと。それにしても思ったより流木が多いな」

言われて改めて周りを見渡す

馬も人もそれぞれせっせと働いている。


馬は流木やゴミを片付けて、人は石を運ぶ。


広場から河原までの道を作り、丸太と小石で階段を作る

馬が大きな石をどかして木道を作る。


太めの丸太を交差してバッテンの足、これを丸太で繋いで、足の長い平均台みたいにする。

すでにこれが何台か出来上がっている。


男たちが川の中にそのウマを運び、大声で声をかけて足の角度を調整し

また別の男たちは、長い板を方に担ぎ川に、棒の上に乗せ、それを固定する。


また違う男たちがウマを運ぶ。大きな声で気合をいれ、胸まで川に浸かり足を抱える。


怒号のような声が飛び交う。

「こりゃ、俺の出番はないかな」


ぼーっと眺めていると

「おい。お前も担げよ」


牧童がやって来てオレの手を引っ張る


「オウ。オウ。オウ。」

気合の声を上げながら板を担ぎ川に入る。


「こ、コケる。」

流れに押されよろけそうになる。


「踏ん張れーー」

必死に踏ん張る。

足が滑って、

「アブアブアブ溺れる」

牧童がオレの脇を抱えて助けてくれる。


オレはもう良いや。任せるよ

岸に戻ると大の字になって呼吸を整えた。


木道の方に目を向けると


「お前、情けないなぁ・・・」

そんな顔で馬が見ていた。

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