第19話
とりあえず農家との交渉はシアンさんにおまかせー
こういうときに、こっちの人と顔繋ぎの会話とか練習してみればいいんだけどな。
今回はおまかせの方が良いってオレの直感力が言う。
「ションベンションベン」
「あれ?馬車がない。どこへ行ったんだ?」
「おーーい。馬――。」
「いないな。」
道へ出て遠くへ目を凝らすがいない。
まぁあの馬のことだから心配ないだろう、牧場の柵にマーキングしておく。
誰もいないな、人気を探して畜舎へ向かう
「あ、居た。」
畜舎の入り口あたりに見覚えのある馬車、馬つながってないね。
中に入ると、たくさんの馬がバタバタと倒れている。
「すごいねぇ。あんたの馬。」
牧童がいた。
「どうしたんですか?これ、大丈夫ですか?」
「あんたの馬の仕業だよ。あんたの馬が角や足でグリグリやると、気持ちよくなって
みんな、あーなっちゃうんだ」
牧童は呆れて苦笑している。
「あんたの馬がさぁ、水飲み場に居ると、皆そっちに集まっちゃって、柵が壊れちゃうから
コッチに連れてきたんだ」
横になってる牧場の馬を足でグリグリしてる馬がいる。
「あの野郎・・・」
「ま、気持ちよさそうにしてるから大丈夫だ。ところで今日は?」
「おととい雨が降ったでしょう」
「あー結構振ったね、旅の人は大変だろうが、俺たちは助かるよ」
「あの雨で橋が流されちゃったんです。ご存知でした?」
「ありゃーーそりゃ困ったね、じゃ、皆、足止めされちゃってる」
「皆は先に渡りきった後だったんですけどね、俺たちだけ取り残されちゃって」
牧童と話をしているとシアンさんがやって来た。
「水飲み場に誰も居ないから驚いたわよ」
シアンさんはオレに抗議をするが、オレのせいじゃない。
「馬が水飲み場で迷惑かけちゃったらしくて、牧童さんが小屋に連れて置いてきてくれたんだ」
「迷惑だなんてハハ」
「皆さんには今日一日、お手数おかけしますが、よろしくおねがいします」
「いま、家長様にお願いして、ここの皆さんと一緒に橋をかけようという話なんです」
「橋を。・・・そう言えば、昔やったことが有るって聞いてるよ。知ってる人も居るんじゃないかな」
「それはすごい。経験者が居るのならはかどりますね」
「王国が立派な橋を掛けてくれたんだけどね、流されたかぁ。王国はアレだし、待ってたってどうにも成らない。今の時期はあんまり忙しくないからやりたいね」
乗り気ならありがたい
「ここの家長もそう言ってました。皆さんここに集まるみたいですから、待ちましょう」
腰に両手を当てたシアンさんが言う
いつの間にか馬たちが外に出ている。半分くらいは固まって向こうに歩いていった。
牧童が来て耳元でささやく「あのお嬢さんは、どんな方なんですかい?」
「街の商家のお嬢さんですよ、性格はちょっとアレなんですけど」
畜舎の角から人が集まってきた。30人くらい居るだろうか、大人数だ。
歩きながら身振り手振り加えて話し合いをしている。
あのひとがリーダーかな。
「お待たせしました。今、材料の手配をしてるんですワ。馬たち引いてくるから。そしたら
作業始めるよ」
「丁度ね、祭りの準備で、丸太やら板やら、裏の方に置いてあるから、使えるのもあるかも」
「ほら、アッチの畑に小屋作んべぇって、丸太切ってあったんべぇ」
「クワやらモッコやら、いくらでもあるからぁ」
勝手にどんどんと話が進んでいく。
材料を載せた馬車を引いて馬たちも集まり始めた」
グループ分けが出来ていて、リーダーが各グループに指示をしていく。
その間にも馬たちが大きな材料を引いてくる。
おんな達が芋団子やお茶を運んでいる
子供が使いっぱしりで道具を取りに走る
オレとシオンさんは切れっ端の丸太に座って皆の作業を見ている。
「私達、あんまり役に立ってないわね」
「何もやることがないですね」
牛がやって来た。
いや牛じゃない。宮殿に住んでる牛のような顔の家長だ
「そんな事ないで。そちらさんが知らしてくれたから、解ったことや。
そういう切っ掛けがなかったら、こうしてみんなで作業休んで橋掛けるなんて出来ない事や」
牛の家長は皆の方を向き大きな声で話す
「おーい。みんな。もうすぐ祭りやったけど、今年はこれがお祭りや
橋をかけて、創神様に奉納や、終わったら宴会やー」
「おう、いいねえ」
どこからともなく歌が広がっていく
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