第18話
チュンチュン。
今日はいい天気だな、幌の中に差し込む朝日に目を細める。
シアンさんはもう起きてるんだな。
よし、今日は頑張るぞ。
馬車を降りると・・何もない。
朝食のために出しっぱなしにしておいた荷物が何もない。
「ヘッ?泥棒??オイ、馬!」
馬を探して林に目を向ける。
住居跡の石組みの中にテーブルや椅子を置き、ルンルンと皿を並べるシアンさん。
並べるって言ったって芋団子だけなんだけどね
馬もウロウロしている。珍しい、いつも丸くなってるのに。
邪魔な灌木の処理をしてくれたんだ。
馬、朝っぱらから大変だな。
「何やってるんですかシアンさん」
ツンと澄ました顔で
「何をやっているんですかとは、とんだ朝の挨拶ですことね、タケシさん」
へ、下手くそだ。
「一人で運んだんですか?起こしてくれればいいのに」
「これがヒントです」
「だから、女王はテーブルをエッチラオッチラ運ばないですよ」
ドシン、ミシッ。馬が角で木に体当りしている。
墜ちてきた虫で朝食をとるヒーラーさん。
「何でこっちに運んで来たんですか?」
「馬車を空けたいのよ。朝食をとったら、ベッドと衣装箱を運んでね」
食料箱です。
「衣装箱はあっちの壁沿いにお願いね、ベッドはこっち」
壁なんか見えませんが・・・
「運んだら、幌の布を掛けておくわ」
「ここで暮らす気ですか?」
「フフっそれもいいけど、全部タケシ一人で運んでね」
「えっ?」
食料箱の中身は木桶で分けて運ぶ、空になった木箱はなんとか下ろせた。
幌にかかったロープを外し、木箱に結んで引っ張る。
「奥様、こちらでしょうか?」
「えぇ。でも蓋は外してきたほうが宜しかったかも知れませんね。」
分けて運んだほうが軽かったかもね。
衣装箱を開けて、しばし鑑賞。
毛布にくるんで行商人スタイルだ。
シアンさん箱を撫で回して何をしてるんだろう。
幌と骨を外して。馬車は荷車スタイルだ。
馬を繋いで、さぁ行きましょう。
あれ、ヒーラーさんが居ない。ウチに置いてきちゃった。
ウチじゃないし。
馬車は牧場に向けて軽やかに進む。軽いだけじゃないよね。
フンフンと上下に振られる首もリズミカルだ。
林を抜け牧場の水飲み場が見えてきた。
内側から水を飲む馬が3頭。
真っ直ぐに馬車を入れる。
どこに頭を突っ込むか迷ってやがる。
「取り敢えず、馬車はここに置いて、人を探しましょう」
「この間の人はいますかねぇ」
見回すがどこにも居ない。
畜舎の方へ行って中を覗いてみても誰も居ない
「ウマしか見てない癖にフラフラとどこへ行ったんだろう」
「屋敷の方まで歩いてみましょうか」
一面に低い葉が広がっている
「トーキョードーム何個分だろ?」
「何?それ、おいしそうな名前の料理ね」
「今度作りましょうか」
「本当?タケシ、料理出来るの??」
「コンロは使えません」
芋畑。土の中に、まんまるの団子が鈴なりに成るそうだ
広いし牧場有るし、北海道に来たみたい。
東京ドームよりサッポロドームのほうが美味そう、
そんなこんなで宮殿のような屋敷の門まで歩いてくる。
門番の兵士に誰何されるが、ここは慣れているシアンさんに任せよう
「旅の娘ですが、この先の橋が流されて難儀をしております。
手を貸していただきたいのですが、家長は居られますか」
下手くそ、だが、それがいい
髪をまとめてるバレット?が妙にエレガンスでゴザンス。
「シアンさん。オラァ馬見てくんべかとおもんだけんども、よかんべか」
ついでにちっとしょんべんたれっちくらぁ。
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