第15話
目を覚ましたが、まだ暗い。
覆いを開けるとちょっとびっくり
タープが目の前に下がってた。馬が柱を倒したのか、風で倒れたのか。
かき分けるように外に出る。
夜は明けたようだが、どんよりと暗い空。雨は上がってる。
タープを幌の上の捲くりあげようとするのだが、慣れないことで一人では大変だ
シアンさんが起きてきて、手伝ってくれた。
「一人じゃたいへんよね」
シアンさんでも大変らしい
2人でロープを掛け、朝食の支度をする。
今日のメニューは「芋団子のスープ、緑のペースト入り」
この緑のやつが入った芋スープ、教会で初めて食べた、結構好きだ。
この芋団子、潰して丸めたわけじゃなく、芋そのものだそうだ。
今朝初めて教えてもらったぞ
「ん??酸っぱい!」
備蓄の芋が腐っちゃった?ヤバイんじゃね?
「んフ。今朝のスープは芋団子の漬物よ、ちょっと酸味が有って美味しいでしょ」
「あー漬物かぁ便利な芋だな。腐ってるのかと思ってびっくりしたよ」
「驚かそうと思って、タケシ食べたことないでしょ」
「気に入った」
「教会でしか食べないわね、こんなの」
「芋ばっかりだからね、飽きが来なくていいね、きっと身体にも良い」
腹を壊したら頼むよ、とヒーラーを探すが、食事に行ったのか見当たらない。
馬も勝手に草を食いに行ってるのだろう。
全く世話の掛からない奴らだね
頭の中で半分呆れていたら、馬が戻ってきた。
おまえ離れていても気持ちが読めるのか??
馬が珍しくそばまでやって来てオレの背中を角で刺す
「痛っ。何だ?どうした」
馬が川の方へ歩いていく。
オレとシアンさんが着いていき、川を見る。
「だいぶ濁ってるねぇ、これじゃ水が飲めないよな」
川の水は茶色に濁り、とても飲める状態ではないが、増水はしていない。
むしろ昨日より水量が減っているようにみえた
「水が減ってるわね、マズイかも知れない。すぐに出発するわよ」
馬とシオンさんは馬車の方に走っていく。
遅れてオレも走って戻る
荷物を片付け、木箱を積み込む。
馬はもう馬車の前で待っている。
「ぐうぉーー」
ヒーラーも戻ってきて幌の中に走り込む。
馬車を繋ぎ終えたシアンさんが御者台に乗り、オレも隣に乗る。
「行って」
馬車は軋みを上げ、大きく揺れながらスピードを上げる
広場から出て、来た道を戻る。
遠くの方でゴーゴーと音が響く
やがて轟音とともに濁流が押し寄せ、流れは橋を破壊し岸を削る
石と石がぶつかり合い土煙が上がり、キナ臭いニオイがする。
「山津波ね・・」
「危なかった」
馬の首元をポンポンと叩く
「橋、流されちゃったね」
「うん・・」
激流の迫力に圧倒され、興奮と不安で頭の中がグルグルする。
どうしたらいいのか・・・・
どうしたらいいのか、って始めから何も考えていないのだから答えが出るはずもない。
「うん。なるようになるさ」
ちょっと見直した。
とでも言いたげな顔でシアンさんと馬がオレを見る。
ゆっくりとしたスピードで馬車は来た道を戻っている。
馬がときどき振り返るけど、目を合わさない。
「困ったな」
本当の所、よく分かっていないのだが言ってみる。
「困ったわね」
泣きそうな顔になってるシアンさん。
「一緒に出発していればこんな事にならなかったのに・・ごめんなさい」
「オレはさ、皆に助けてもらわなかったら、どうなってたかわからない。
いや、街に残ったらどうなるのかもわからず旅に出た」
シアンさんは下を向いている
「オレが王国から逃げ出さなきゃ成らない理由を、オレは知らない。」
「それは、王国を出なきゃタケシは・・・・」
じっとシアンさんの目を見つめる
「教主様に逢いに行く」
「ダメよ」
「どうして?」
「逃げなきゃ・・・」
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