第13話

小鳥たちのさえずりが聞こえる。

朝だ。

例によって軽く痺れる腕をそっと抜き

絡まってるのを解いて、起き出そうとすると、手を掴まれた。

「今朝はまだいいわ、もう少し・・・」


昨日は牧童に追い立てられて早く出発したって言ってたね

昨夜騒いでたし、今朝は遅寝してるだろうか

再び横になり毛布をかぶる。ゴソゴソ。


「タケシさん、手伝って」

二度寝による至高の時は一瞬で過ぎ去るものだ


馬車から降りるとシアンさんがすでに木箱を積まんと待っている。

「え、あさごはんは?」

マヌケな言い回しで質問する

「昨夜の残りは無いし、水も無くなっちゃったし。川まで行かなきゃ食べられないわ」

林の中は薄暗いが、道の方を見れば結構日が上っている。

「ちょっとまってて」

道の真ん中で朝食中のヒーラーを拾い上げ、戻って馬の頭に乗せる

「おまたせ」

荷を積み終わったら川に向けて出発だ

馬車に馬を繋ぎ、御者台に登り手綱を握る

「運ちゃん、川まで」

馬がゆっくり方向転換して道に出ると、前方にちょっと高くなってるのが見える

あれが川だな。


橋の手前は広場になって無数に付いた車輪の跡が何か寂しさを感じさせる。

「また置いてけぼりになっちゃったな」

何回遅刻したんだ?向こうでやってたらもう首だよ


一応橋の真ん中まで行って道の先に目を凝らすが、流石にもう見えなくなっている

一艘の船が川を下っていく。もう昼近い時間だろう。


しばらくすると団子の焼ける匂いが漂ってくる。

「出来たわよ」

「あれ?今日は団子じゃないんだね」

皿の上には団子を平たく潰して焼いたのが皿に乗っている。それと豆のペースト。

「こっちのほうが早いのよ」

「早くつくれるのは良いんだけど、また大遅刻だね」


スッキリした顔だ、何でそんなにサバサバしてる?

「もう顔洗ったんだ?」

「当たり前じゃない。さっき水汲みに行ったときにね」

「あ、ちょっと待ってて。オレも洗ってくる」


戻ってきて朝食を頂く


「ごちそうさま。積み込む前に着替えする」

馬車に登り、衣装箱を開け、ちょっとだけ鑑賞の時間だ

レース付きの物も有るんだな・・


「何してるの?」

「ヒェ。」

「それは女物よ。タケシが気に入ったのなら付けて構わないけど」

「だ、大丈夫です」

「そう。じゃ、私が着けるわ、タケシのお気に入りでしょ?」


シアンさんが入ってきて服を脱ぎ始める。

「そんなに見つめないでよ、タケシも脱いじゃって」

「ヒャイ」


シアンさんはスルスルと全部外すとレースのやつだけを身につけポーズをとる。

オレ、紐を解いた下履きが引っかかってます。


「今日は洗濯の日に決めたの」

決めたのってそんな・・・

「本当は水浴びもしたいんだけど、もう明るいから拭くだけで我慢。水がいっぱいあるっていいわね」

やっと下履きが付けられた。一緒に結んじゃってる気もするけどこれでいい。

「その格好でいいから桶に水を汲み足して来てくれない?朝はちょっとしか汲んでないの」


下履き一つで木桶を下げて川辺に降りる。

足跡が沢山付いているな、

流れの中に石が積まれてそこだけ深くなっている。

ここで水を汲んだり洗濯するのか。石積みの上流側に桶を投げても大丈夫


ついでだから身体も洗っちゃう?

履き替えたばかりの下履きを解き、水にひたして絞るとそれで身体をこする。

「あー気持ちいい」

日の当たる場所でのフルチンは気持ちいい

水の冷たさでキュッと締まる気がする


「ずるいじゃない」

こレースの下履きだけで川辺に降りてきたシアンさんが抗議する

「遅いから覗いてみたら一人で水浴びしてるじゃない、この格好で一人待たせるなんて」

シアンさんは下履きを脱ぎ捨てて川に入ってくる


「誰もいないし、いいじゃない」

「誰もいないし、いいよな」

さっき船が下っていったけど・・・


川から上がり下履きの布をパンパンとやって身につける

シアンさんも川辺に脱ぎ捨ててあったのを着けた

「濡れてるんじゃない?」


今日は洗濯日和だ。2人でゴシゴシ頑張ろう。

広場で馬が鳴いた。

アイツも洗ってやらなきゃ。

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