第11話
「おい、馬。もうちょっと上手に避けて歩けよ。端っこ踏んづけてるじゃないか。
だから余計に臭いんだよ」
相変わらず。代わり映えのしないウンコ。
近づいてもないし、遠ざかってもない。
そういうことだな。一つ賢くなったような気で、一人頷く。
「うわっ!何か出てきた!ゴブリン?魔物?」
大きくはないが見慣れないシルエットの生き物が林から出てきた。
だが、シアンさんも馬も落ち着いている。
「よく見りゃ人間か」
背中の背負子に芝をいっぱい背負ったおばさんが出てきたのだ。
「びっくりしたよね」
小声でシアンさんに同意を求めるが返事はない。
「こんにちは」
にこやかな顔でおばさんに挨拶された。
「こんにちは。お仕事ですか?」
「旅の人かい?随分離れたねぇ」
「まぁ、出発に遅れて、道草も食ってたし。アハハ」
「利口そうな馬だし、安心だねぇ」
角を撫でながら馬を褒めてくれる。
「隊長さんが用意してくれた馬車なんですよ」
おばさん、開けた口に手を当てて固まった。
「それでしたら、お二人のほうがよろしいですわよねぇオホホホ」
なんだよ、急に口調を変えやがって。
それより、おばさんの牛のようなおっぱいの間から小動物が顔を出したぞ
「かわいいーーー。それヒーリーですよね。」
シアンさんが目を輝かせてる。
「林の中で見つけたのよ、かわいいもんだねぇ」
「ちょっと抱っこさせてもらえないですか?」
「あぁいいとも」
「ん――――――――。」
シアンさん両手で包み込むように抱っこして愉悦の表情だね。
「この子、売ってもらえませんか?私ナースなんです。いつかヒーリーを飼うのが夢で」
早口でまくし立ててるシアンさん。
「ナースさんじゃ仕方ないねぇ大事に面倒みてくれんなら、いくらでもいいよ」
にこやかに笑っているおばさんに、シアンさん、いくらかの金を渡してこの小動物を手に入れた。
メガネザルに似ている小動物、ゴブリンっぽい顔が可愛くない。
「この先をちょっと行くと、橋がある。そこの空き地が今日の野営地だよ」
やった、やっと追いつく
「川の近くで虫が多いんでねぇ、ここに虫除けにいい枝を見つけたもんだから、一人で残って柴刈りをしてたのさ」
「重そうな荷物ですし、歩いて行く訳にもいかないでしょう。一緒に乗って行きませんか?」
「隊長は男二人って言ってたんだけどねぇ。大した荷は積んでないからその馬車に乗せてもらえって言われてるんだけど、」
男二人ってアイツらか。
馬が来た道を振り返って見つめている。
「あら、来たよ。噂をすれば何とかってやつか」
アイツらっていうか、片っぽの下っ引きはコイツさんだったかな
おばさんはコイツさんらの馬車を止め、交渉している。
話がまとまっておばさんは手を振って荷車に乗り込んでいった。
手を振リ返すとコイツさんじゃないアイツさんが手を振ってきた
コイツさんはウチの馬にてを振っている
「おい、馬。あんな野郎の相手するんじゃない」
「どうします?くっついて行きますか?」
シアンさんもちょっと嫌そうな顔をしたが、ヒーリーといちゃいちゃ始める
「少し離れて行きましょう」
シアンさん、手綱を握る気がないね、ヒーリーに夢中だ。
「それ、何を食べるんですか?」
「虫ね。」
「あー虫ね。道に一杯居るじゃん」
「ま、まぁそうね。飼うのはそんなに難しくないのよ」
またこちょこちょ始める
「それ、そんなにかわいいですか?」
決してジェラシーなんかじゃないぞ
本当にゴブリンに似てるんだって。ゴブリン見たこと無いけど
「ヒーリーはナースの友達なの」
オレの友達はエロ馬だけ・・・どね。
「ナースにいろいろなことを教えてくれる。それだけじゃなくて患者さんやナース自身の心を癒やしてくれる」
夜の癒やしはオレにお任せあれ。ってそっちの専門家じゃない。それ勘違い。
「タケシも癒やしの仕事がやりたいんでしょう?ならヒーリーはきっと懐くわよ」
「ま、まぁそっちから仲良くしたいって来れば拒む気はないけど・・・」
「ちょっと変わって。そろそろ出ましょう」
ん、もう充分車間が開いたよな。
シアンさんが手綱を握り、馬車が動き始めた。
お椀にした両手のなかでヒーリーは丸くなり眠り始める。
「か、かわいい・・・」
チッ。馬が舌打ちしやがった。なんだよ、ヤキモチやいてんのか?
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