第7話

動揺を隠せない。

表情が固まっている。

馬も動きが硬い。

「おまえ、昨夜あの男と一緒に寝たのか?」

反応がない

「なぁ」

空を見るな!ちゃんと前見ろ。

シオンさんを見れないオレは馬と会話を試みていた。

「馬と心を通わせられれば、運転も上手になりますよ。タケシさんはきっとうまくなります」

「そういうものですか」

「馬だと思っていたらダメですよ、人と同じです」

「一緒に寝たら仲良くなれますかね」

シオンさんがまた湯気を吹いた。



「村の入口までどれくらいありますかね、隊はもう先に進んでるんでしょうが」

「そうですね、半日は掛からない距離ですよ」

「じゃぁそろそろ見えてくるんじゃないですか?」

「何がです?」

「だから、村」

「あそこに家があるでしょう」

シオンさんは畑の真ん中の一軒家を指差す

「一軒だけ?それが村?」

「一軒じゃ村とは言いませんよ、街のように並んで建ってはいませんけど10軒くらいの一つの村が一つの家になってますよ」


その辺が難しいんだよ。なんだよ家って。

「あの建物は畑で働いている人たちの住居です。もう暫く行くと家長の建物が見えてきます。立派な建物ですよ」

「農奴があんな立派な所に住んでるの?」

そりゃ悪くないどころかとんでもなくすごい待遇じゃないか


「土の国の農奴達はああいう建物に大勢で暮らします。同じ畑を耕し続けますから移動しないんです。だから男女の仲になって子を設ける農奴も居るんですよ」

共同生活か、なんかホッとした。一つの家に共同生活なら子供もできるわな。


「ここはまだ王国です。王国に奴隷は居ないんですよ」

「あっそうか、」

「でも便宜上農奴と呼ばれることもありますね」

まぁ農家は保守的な人が多いものだ

「王国は耕作地が小さいですからね、一年中同じところには住み着かずに、身体一つで忙しい畑を転々と移動します。」

あの建物は寮みたいなものか

「じゃぁ一年中休みなしみたいなものですよね、大変だ」


「ええ。生活は本物の農奴より厳しいと聞きます、王国だけですけどね、そんなのは」

「それでも家人がいいのかね」

「頑張って、あれを任されるくらい出世できれば家持ちの希望も抱けるし、子供や孫に継がせる事ができるって言うのが王国流の触れ込みだったのですが、悪知恵に長けた者もいますね」

「ありゃりゃ」



「あー見えてきた。でかいねぇ。王の館位有るんじゃないの?」

「まさか、フフ。半分位ですよ。」

それはそれですごいな、

「貴族かよ」

「キゾク・・それも、館の言葉?」

「簡単に言えば特権階級のことだ。」

「創家とか分家とか家持ちがそうでしょ、家長一族の屋敷だものおおきいわよ」



家長の屋敷の塀が近くなってくる。ありゃ門か?

「おいおい、兵士までいるぞ。門番か?」

「こういう家では下っ引きを雇って門番や雑用をやらせるんですよ」

「下っ引きなんて雇えるんですか?」

「えぇこのくらいの家なら大丈夫ですよ。私の元いた医家にも居ましたが、他所の国に買われて引っ越してしまうと彼らは置いていかれます。私も置いて行かれちゃったんですけどね・・・」

「王国がなくなっちゃったらどうなるんだろ」

「王国の農家はいろいろな作物を同時に作るやりかたですから人手が必要なんですが・・

なくなったら、やりかたを変えざるを得ないでしょうね。」


「ここで食材わけてもらえるかな?」

「それはムリでしょうね。イナゴの群れが通り過ぎた後だもの」


「色々見せてもらいたいところだけど、今は気が立ってるか、ハハ」

「そうね。イナゴ達に追いつかないと」

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