第6話

朝だ、鳥の声がする。朝チュン


昨晩、2人で一緒に馬車に入り、「マッサージ」ならぬ「癒やしの手技」を施した.


結果。



・・・・えらいことになりました。


オレの胸に埋って寝ています。足が絡んで動けません。


それでもオレの膀胱は満タンです。朝の形になってます。


なるべく起こさないようにそーっと木箱ベッドを抜け出して馬車から飛び降りる

馬が丸まって寝ている、片目を開いてニヤッとしやがった。



エロ馬め。



林の中で用を足し川辺で顔を洗って戻ってくると、恥ずかしそうに顔を隠したシオンさんが入れ替わりでシオンさんが林の小道に入っていった。


「茶でも入れてみるか」


ポットに水を入れコンロに乗せてレバーの玉を握る。

火は着かなかった・・・


「私がやる。」


「いや、練習すればコツを掴めるよ」


昨日言われたことをそのまま返す.


「タケシは出来ないことがいっぱいあるけど、大丈夫。私がお世話してあげるから・・・」

「でもそれじゃ」

「ソーダ家の家人になるまでは、ただの世話係よ、そう言われてついてきたんだから」

オレの背中を両手で押し、馬車で着替えてくる様に言われた。



毛布を丸めて縛って片付ける。


食料箱なんだよな、何となくモヤモヤするが、馬車の中である。スペースを有効に使うのが知恵だ。


「衣装箱はこれだな」


案の定一緒だ。

興味深く観察させてもらう、紐で縛るタイプか。


あれもこれも紐だらけ。なんの紐だかわからない。



昨夜言われた、前が開くズボンやパンツはマズいらしい.


横にスリットが有るこっちのパンツを身に着け、朝食の席につく。



「お茶と一緒に頂きたいなら焼団子のほうがいいと思って・・」


団子スープ一品の予定が、お茶付きの2皿になってた。

オレはまた余計なことをしてしまったようだ。


「ごちそうさま。さぁ、さっさと積み込んで出発しようか」



「チョット待って、」


シオンさんが吹き出しそうな顔で止める。


何でも服の着方がおかしいそうだ、ズボンの紐と紐を結ぶんじゃなくて前と後にそれぞれ巻いて結ぶらしい。ウンコのときは後だけ解いてペロンと尻を出す。

シオンさんはパンツの履き方までチェックしてウンコのやり方まで指導してくれる。


「赤ん坊になった気分だな」

フフッと笑ってブーツを履かせてくれた。




荷物を積み込んで馬をつなぐと出発だ。


「今日もよろしく頼むぞ。」


御者台から馬に声を掛けると尻尾で返事をされた。



しばらく進んでいくと、こっちに向いた馬車が、道の真ん中で止まっている。

王国に戻る人が居るのだろうか。


すれ違いも出来そうにないし、このまま近づいて行き、

馬同士が鼻先で挨拶する距離まで行くと、見覚えのある男と御者が睨み合いをしている。


喧嘩だろうか?常識に疎いオレが仲裁などできるわけがないが、

馬車をどかしてくれないとこっちが進めない。


「どうしました?」


「・・・」


あれ?一応知り合いだし、昨日は感謝されたりしてたのに。

期待を裏切られ困惑を隠せない顔で御者の方に目線を送る。


「コイツを迎えに来たのに、馬車に乗りたがらないんですよ」


「・・・」

コイツと呼ばれた男は頬を膨らませ、すねたようにそっぽを向く


「強情なやつでね、一緒に知り合いの所に行こうって誘って同意したんですがね」


「あのときは酒を飲んでたから・・」


「嘘つけ、大体お前が飲むのは酒じゃなくて草だろ、その金もないくせに」


「そういうことじゃなくて・・」

「じゃぁどういうことだよ」




「どうせ農奴だろ・・」


「農奴の何が悪いって言うんだよ!下っ引きの癖に。家に入れるんだぞ」


「オイラは王国の方がいい」


「王国なんてもう無いんだよ!農奴になりゃ心配はないんだから、な。」


これはオレにはムリな相談だ、こっそりシアンさんに質問する.


「農奴って奴隷だよね」


「まぁ制限はありますけど、食べるには困らないわ、彼の立場なら悪い話じゃない」


「ふーん。じゃ、何で拒んでるんだろね」


「自由じゃない?下っ引きっていうのは要は使いっぱしりの雑用係ね、家に仕えていないから住むところも決まっていないし、大体は犯罪まがいのことをやって小銭を稼いでるのよ。王国ならではの存在ね」



犯罪まがいね、そうは見えないんだけどな。

ここはちょっと勉強のつもりで・・・


「お兄さん。昨日、ほら、オレの事覚えてる?」


「あぁ。世話になった」


「やっぱり農奴って辛いよね、きつい仕事なんでしょ?」


「オイラ、足が悪いからな・・まともに仕事出来ないよ」


「朝からここまで歩いてきたの?」


「あぁ」


「じゃ、昨日の場所で寝ちゃったんだ」


「いや、いくら野宿が得意でもあそこじゃムリだ」


「ほう」


「あんたらの馬といっしょに寝たよ。いい馬だ」



「えっ!」


「あんた家持ちには見えないし、夫婦じゃないだろ」


「・・・・・・」



「馬もしっかり聞いてたぞ」


馬はそっと目をそらす.


「ななななんだよ、オレ達は人にはばかることは何もしてないぞ。か、神に誓っても良い」


ダメだコイツ。こんなのに関わってちゃ碌なことに成らない。


助けを求めるように向こうの御者の顔を見る


「ちょっと馬車を寄せるから待っててくれ、オイちょっと手を貸せ」


下っ引きに命令すると、手慣れたふうに馬を誘導して馬車を寄せてくれた。



「じゃ、じゃぁまた、どこかで」


「あぁ旅の安寧を」

「あんにょいうぉ」



おい馬、ちょっと速いぞ。

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