心がある兵器

作者

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★★★ Excellent!!!

舞台は戦時中の工業大国
主人公は異能力を生まれ持ち「奇跡の子」として国に管理され、戦争に赴く少女イル
設定は殺伐としてますが、この物語はイルと彼女の拠り所となる一般人アシュリーが些細な幸せを一つずつ積み重ねていく日常に焦点が当てられています
身分が大きく異なるイルとアシュリーが愛を育んでいく様は美しくどこか切ないものです
非常に読み応えのある作品です

★★★ Excellent!!!

戦火に軍隊があるように、戦場には兵器があります。では、その兵器が心を持つ子どもたちだったら。
そんなワクワクする設定に、年の差百合と、消耗した世界と、ささやかな日常の優しさと、ほんの少しの切なさをトッピング。するとこんな素晴らしい作品ができてしまいました。

「奇跡の子」と呼ばれる、特殊能力を用いて戦う子供の一人、イル。政府の機関によって管理され、保護され、そして兵器として戦場へ駆り出される生活の中で育む一般人アシュリーとの愛。二人の出会いはその他大勢の世界を変えはしませんが、二人の世界を確実に変えていきます。

階級化階層化された街の中で終わりの見えない日々に耐え、奇跡の子たちがもたらす戦果だけを待ちわびる一般人。それぞれの痛みを抱えた中で強く生きる奇跡の子たち。戦争と日常という危うい板ばさみの中で、描かれるのは痛みや苦しみではなくちっぽけな「願い」や「祈り」です。一人の力ではどうすることもできない現実に、なんとか折り合いをつけながら生き続ける人間の強さと、あるいは弱さ。どんな立場であろうと二本の手でできることは限られているから、それぞれが手を伸ばし掴もうとするものにドラマが生まれます。

主人公であるイルを中心に淡々と描かれる世界は決して美しくも優しくもない世界です。汚れずに生きていくことはできず、生活の裏には少なからず痛みが伴います。そんな中で決して器用に生きていないイルとアシュリーが互いの存在を知り、触れ合い、枯れていた心に芽を咲かせる。
無機質だった景色に色彩が増えるように、二人の過ごす日々を通して彼女たちを取り巻く人間関係や世界観が補完されていく様が実に見事です。練り込まれた設定をあえて語りすぎず、小さな積み重ねによってイメージを膨らませる。他の作品もそうなのですが、作者のMOREさんはこういった情報の提示がピカイチにうまいですね。

戦火の国を舞台としつつも… 続きを読む