芯 奥 Ⅱ
「おくま、そなたも大変でしたね」
これでもわたしは精一杯の愛想を振りまきながら、
年の頃は
べつに知りたいともおもわなかった。彦左やわたしより数歳は上だろうが、背丈はわたしと変わらない。小柄で、熊というよりも、どちらかといえば狐のような印象を受けた。一重瞼に細長い瞳、鼻はやや高い。申し出どおりに家来にしてやろうというのに、何が不服というのだろうか。
「・・・・お熊というのは、どうも女人のようで、嫌ずら。熊、と呼び捨てにしてもらいたいだにぃ」
率直に本音を吐露した熊蔵は、慌てて、同じことを丁寧に言い直した。笑いで返しながら、
「では、こらからクマと呼ぶことにします」
と伝えると、嬉々として頭を下げた。
「・・・・そのつど頭を垂れなくとも、いいのです。
・・・・もらいたいと告げると、熊蔵は
わたしが
「・・・・なにがなにやら、天と地がひっくり返ったようなありさまでした。
それから熊蔵は、参戦した一群は伊賀者に違いないと推測を述べた。とすれば、やはり服部半蔵さまの指示で、わたしは、この船にいるということなのだろうか。いい機会なので、熊蔵に弥右衛門の素性を知っているかと
「・・・・あやつは、おそらく、
「あ」
それしか声にならなかった。茶屋衆とは、茶屋
もう少し詳しく茶屋衆の動向を熊蔵に訊こうとしたとき、わたしの目の前に、大人の顔をした童子が躍り出てきた。四尺(約120㎝)ほどの背丈だろうか。
「な、なんだにぃ!」
あまりの突然のことに頓狂な声を
童なのか、大人なのか、判然としない。けれど、十歳といった童ではない。思慮深い目付きと顔に刻まれた皺と、
そのおとこは、ジロリとわたしを眺めると、にやりと笑った。
「ほほう、彦左が惚れたおなごというは、この
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