邂 逅 Ⅱ
・・・・初夜の床でおもわず息が止まりそうになったのは、夫の隣に座していた青年を
「さすがに、家康の殿さんのご息女だけのことはある・・・・」
・・・・そんなことを信昌どのが言った。
父家康の参謀、
「・・・・わしは、腹腐れ
このときわたしは、どんな表情をしていただろうか。事前に申し合わせていたのか、小太郎は
返すべきことばを持たないまま、わたしは唇を噛み締めていた。これは、わたしを試そうとしている信昌どのの計略なのだとおもった。そうであるならば、
・・・・そう悟れば、気が締まってきた。締まるにつれて、表情もやわらいでいったはずである。
そんなこちらのこころの動きを見逃さなかった信昌どのは、さすがといわざるをえない。
「・・・・姫、わしは、武田にやった人質の妻を見殺しにした男だ。それについては、
気を締めたはずであったのに、ふたたび
「小太郎どのは、わが奥平の家にとっては古き恩のある家の末裔・・・・
「どうか、姫、ではなく、ただ、亀とのみお呼び捨てくださいませ」
やっとの思いで口にできたのは、その一言だった。
「よくぞ、申された、姫、いや、お亀、いま一つ気掛かりなことがある・・・・姫、いや、お亀の
このとき夫が語ってくれた兄についての気掛かりとは、兄信康が、あまりにも出来が良すぎる・・・・ということであった。わたしは黙ったまま、夫の人物判断というものを聴いていた。
「・・・・人間、どこかに
驚くほどの
・・・・こういう
「・・・・海賊の
さっそく噂をかき集めてきた
「・・・・しかも、海だけではございません、全国
わたしは抗弁することなく、耳を傾けていた。小太郎が海賊であろうはずはない。夫は、小太郎を呼捨てにはしないで敬語を使っていた。とすれば、もっと別種の
外からはわからないことでも、
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