邂 逅 Ⅰ
奥平信昌どのとわたしの仲は、家中の者が首を傾げたほど淡々としていたようで、仲が良いのか悪いのか、
もっとも、いまだに城とは呼べないような造りだったけれど、本丸であろうと、二の丸であろうと、
不服や疑義あらば、いついかなる時であろうとも岡崎へ立ち戻って良し、といった夫なりの
わが奥平家中に織田・徳川への叛心の芽あらば、いつでも実家に
といった忠誠心の
けれど物事には、たいてい表と裏というものがある。
あえて夫がそのように
このような思念の流れができるようになったのは、岡崎から付き従ってきた
夫は戦場に出ている。武田信玄公の遺児、
兄への想いというものは、戦乱の世に、名門
夫への想いは、政略婚姻という家同士の利害を起点とする、将来への絆を築くためのきっかけを醸成していく手段としての意味合いが濃い。
それだけに二者を並列で比較することなどできようはずもなかった。おそらく夫信昌どのも、そのことを察して、できるかぎりこちらの行動を制約せず、自由
笹をはじめ侍女たちの一番の関心事は、いま、一人の青年に向けられていた。
むさい男ではない。どちらかといえば、中性的な感じがした。信昌どのにも男色の好みがあるらしいと侍女たちは想像を
なぜなら、信昌どのとの初夜の床で、この青年、
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