躯体墜救

私は貴方を殺さなければならない

悲しいけれど、とても哀しいけれど

貴方は私に殺されなければならない

寂しいけれど、とても淋しいけれど


切り裂かれるのか

引き裂かれるのか

締め付けられるか

突き落とされるか

選択肢は貴方にあげる

どんな想いも叶えてみせるよ

だって、きっと、誰も見ていない


支配されていく

染められていく

蝕まれていく

侵されていく

際限なき快楽

否応なき墜落

どうか私を責めないで

ほら、聞こえてくるの

何度も何度も鼓膜の戸を叩いてくる

神が 神が 神が 神が

私を呼ぶ


「さようなら」

「またいつか」

「愛している」

「御免なさい」

どんな言葉も添えてあげる

どんな願いも叶えてあげる

だから、きっと、貴方は天国に逝ける


支配されていく

染められていく

蝕まれていく

犯されていく

際限なき皆楽かいらく

否応なき磊落らいらく

どうか貴方は救われないで

ほら、私が後を追った時に

何度も何度も地獄の窯で私を罰して

その為に一歩、おとしめてあげるよ

出来るだけ早く、そこへ逝けるように

ほら、まだ聞こえるよ

何度も何度も臓腑の壁を穿いてくる

神が 神が 神が 神が

神が 神が 神が 神が

神が 神が 神が 神が

神が、神が、神が、神が!


私を呼んでいる。 

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