幻覚影射

ずっと大切にしていたはずなのに

頭の奥、探しても見つからない

誰かがくれたもの

何かを祈ったもの

どうして、と私は灰色の海を潜る


夢みたいに不確かな輪郭が

麻みたいに不揃いな知覚が

思い出せ、取り戻せ、甦れ

脅迫の槌を下ろす


冷たい木漏れ日に出会いたくて

夜を一つ置き去りにしたら

星が泣いていた

それぞれの光はきっと、

誰かの忘れ形見なんだろう

ああ、貴方の追憶が呼吸をする

この命

絞める、占める、閉める


ずっと大切にしていたのだから

きっとめちゃくちゃに壊したんだろう

誰かがくれたもの

何かを祈ったもの

いなくなれ、と私は灰色の空へ落ちる


運命みたいに不条理な神託が

痣みたいに不明瞭な痛覚が

忘れたら楽になれるから

救済の槌を下ろす


冷たい眼球を切り取りたくて

心を半分置き去りにしたら

貴方は泣いてくれる?

それぞれの雫はきっと、

私を修復してしまう

ああ、貴方の追憶が呼吸をする

この命

耐えず、堪えず、絶えず


冷たい木漏れ日を見つけたら

冷たい眼球を喪ったら

全ては逆さまに生まれ変わるって

本当に本当に信じていたのにな


暖かい月に触れたくて

日常の真ん中に倒れたら

黒い私が槌を下ろした

それぞれの欠片は透き通って、

誰でもない場所へ還っていく

ああ、貴方の追憶が息を吐いたら

次の酸素はもういなくなっていた

この命

繋ぐ、紡ぐ、続く

影よ幻まで

届け、届け、届け。

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