最期

皆が皆、驚愕の顔をしていた。


「久々。」


「「「「相変わらず言葉が少ないね。」」」」


そして後は目で語る。


「お母さん、お父さん。それにおばさんとおじさんも。」


「我が娘よ、見事に振られたな。ブハハハハ!」


「そうねえ見事に振られたわねえ。ウフフ。」


そして酒を煽る夫婦の二人


「ちょっ何感動の再会の前に娘の色恋を笑うのよ。」


聖女は慌てふためきやっと幼馴染の表情を見せた。


「料理をありがとう。」


「あら、お粗末さま。娘もあのくらい出来れば良かったんでしょうけどあの子はからっきしだしね。」


「そうだなもう振られて当然だろ。最低限の料理くらいはできないと田舎だと苦労するからな。」


「私が振られたのが料理が出来ないからって言いたいの!」


俺は無言で頷く。この幼馴染は料理がド下手なのだ。そのくせ作りたがるから溜まったものではない。


「そうだったら私は料理が出来るよ!」


勇者はそう言っていたが俺は首を振る。


「聖剣は花嫁修業が未熟過ぎると言っていたぞ。」


聖剣の話を聞く限り何の下処理もせずただ焼いただけの肉を俺は料理をと呼びたく無い。


「聖剣の裏切り者!」


もう折れた聖剣をさらに踏んづける。


「それじゃあ何、私達の料理が下手だから戻りたく無いって言うの!」


「そう。」


俺は即答した。復讐は続けてこそ居るが根本は不味い料理を食わされたく無いというところだ。


「そのくらい許容しなさいよ!」


「これから上手くなるからさ。」


「やだ。」


それまで長い道を歩くのは懲り懲りだ。


「それじゃ責めて生き返りなさいよ!」


「そうだよ。」


俺はもう仕方ないと言わんばかりに父と母から無くなっていた腕と足を貰う。


「じゃあ馬鹿息子、逃亡生活頑張ってね。」


「おうヘタレ息子、隠れる場所メモったから持ってとけよ。」


スッと差し出されたメモを取り歩く。


「「絶対逃がさないもん。」」


「ふふふ鈍感娘、引くのも女の武器よ。」


「そうだぞ男は一人でいた方が気付く時もある。」


「最期の相棒さん料理をするなら最初の宿屋の料理人に聞きに行きなさいな。そして私の子孫、あの子は執念深いですよ。」


それが聖剣の初めて自分から出した言葉だった。


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