「久々。」


俺の幼馴染が前にいる。握り飯を食べながら顔を向ける。


「久々じゃない!早く戻って来なさいよ!」


俺は首を振る。


「なんでよ、なんで貴方は生き返れるのに生き返らないの。」


幼馴染は納得いかないようだった。だから俺は聖剣を抜くことにした。


俺の心臓から全てを聖剣に変えた。そしてもう一つの気配に剣を向ける。


「勇者、否聖剣使いよ。」


「私に気づいていたのかい?」


何も語らないただ剣を造り振るう。


勇者との聖剣と邂逅する。


勇者の聖剣は瞬く間に砕け散った。


「な、そんな何故!?」


「俺の旅のもう一つの目的、それが最後さ。」


聖剣の贋作を造るために聖剣の本質を魔王の望みを果たしながら歩き抜いた俺にとって勇者と呼ばれた彼の聖剣を砕くことなんざわけはなかった。


「聖剣の確認された数々はある民族の魂の数々。魔物が多く住まう忌み嫌われる地より置き去りにされし民族が魔物を滅ぼす唯一の希望となった兵器。」


「君は何故今それを話す。」


「そうよ、魔王を倒した貴方はもう終わったんでしょう。村に戻って来てよ、そしてまた何か作ってよ。」


「その兵器の手入れを許されるのは血縁のみ、振るうことは許せぬけれど手入れ、練磨に至っては家族のみが許された墓の如き器。そして墓守をするごとに家族より血の歴史を見せられる。」


俺の感情が表情が抜けて行くのが顔を見なくてもわかるほどに冷め切った心が不動の心になって行くのがわかっていった。


「それでも私は貴方のことが、」


俺は聖女の言葉を手で制する。


「剣を振るうことを許されるのは血縁が認めし血、癒しを認めるのは血縁の源流の利を知る者。それらが何を意味しようとも俺は納得出来ない。」


「君は何故納得出来ないのかい、復讐は果たしたのだろう。」


「今尚復讐は行われている。そして聖剣使い、人は素直になってはいけないときがある。お前が一番わかっているだろう。」


勇者はハッとした顔をしたが、それも一瞬だけ覚悟を決めた顔をする。


勇者は鎧を解き髪の紐を振り解いた。


「じゃあ素直になってみるよ。女の子として君が好きだってね。」


聖女は面食らうが負けじと告白する


「私だって幼馴染としてで無く一人の女の子として何よりも最後の家族として貴方が好きなんだから。」


そんなにも純粋な好意を向けられたのは両親と他界してから初めてかもしれない。それでも


「断る。」


俺は自分を認めていないのだから


「ふふふ、娘の一世一代の告白が見事に振られてしまいましたわ。」


「これも経験だろ。」


「あら聖女の父君はお厳しいようでして。」


「おいおいお前な、息子もチキンすぎて駄目だろ。」

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