死の国の宿

「お客さん、だいぶ辛気臭い顔をしていますね。」


俺は店主の言葉を聞き流し酒を煽る。


「お客さん、ここいらで肴を挟みませんか。ほら、セロリのピクルスと山羊のチーズが良いのがありますよ。」


俺は頷き、それらを貰う。


カリッ


爽快なセロリの香りに葡萄の風味が混ざり合い苦味、渋味、酸味が程よいバランスで広がる。そしてほのかな甘味が舌にそっと乗せられた。


山羊のチーズはクセを強いままにセロリとの相性を考えられていて濃厚な旨味と塩気が生気を宿してくれるような味だった。


「いかがですかな貴方よりも先に来られた方が作って行かれたモノですが、お次の肴はこちらのお酒とご一緒にいかがですか?」


枡に注がれた無色透明な酒と香ばしい香りが広がる二つの焦げ目の付いた茶色の食べ物が出てきた。


香ばしい、チーズのような味わいであって食感はラフランスのようなジャリっという感覚


そして透明な酒を煽る。


強い


けれども優しい味。


「もう行く。」


「ええ、存分に死者の国をお楽しみ下さい。それとこちらは握り飯というものです。お弁当にどうぞ。」


店主からそれを受け取りカウンターには木製の食器だけが残った。

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