第10話

「……ぶ?大丈夫!?」

その言葉で、僕は我に返った。

心配そうな顔をして、こちらを覗きこんでいる。

「あ…はい。すみません」

「いいよ、無理しなくても」

「もっと頼りなさい!SOS団副団長でしょ!?倒れてどーするのよ!」

そんなことを言われても全く身に覚えが…ん?副団長?

「副団長…だったんですか?僕が?」

「そうよ!」

「ハルヒさん…」

「ハルヒ、ダメだ。今は記憶を失っているんだ。そっとしておけ、でないと余計に負荷をかける」

「…そう、よね」

声が震えている?

僕のために?なぜ?

僕はなにも知らないのに。

僕の名前が言えるかすら怪しいのに。


「一樹君?」

呼び掛けには応じない。

そこまで忘れているのか?

「えーっと…古泉君?」

やっぱり応じない。

忘れてるっぽいなこれ。

「一樹君」

と、言いながら、私はポン、と肩を叩いた。

ビクッと跳ね上がったのは気のせいじゃないだろう、多分。

「…僕のこと、ですか?」

聞いてくる。

その困惑した顔、なんかかなりかわいい。

超レアだね。写真撮ろうか。

「うん、そうだよ、古泉一樹君」

「古泉一樹……」

言葉を繰り返してから、こう言った。

「分かりました、覚えておきます」


月曜日。

学校に行くと、結構噂になっていた。

「あのさ、………らしいよ」

「えーまじ?ww」

私を向いて。

笑っている。皆。皆。

――殺したい。殺してやりたい!

そんな気持ちを押さえ、教室へ向かう。

上履きは…よし、OK。

机…は、OKだね。どこにもいってないし、汚れてもいない。

ロッカーも確認。

画鋲がびょう刺さってたの気になるけど、まぁOK…かな?

何となく、避けられてる感じがするのは、きっと思い込みだ、多分。


そいつは、教室に来るなり色々とチェックを始めた。

前の学校で何があったんだよ。

まさかいじめじゃないだろうな。

「よし、チェック完了。…よかった、なんもなくて」

どうやら俺の推理は見事に的中しているようだ。

一昨日の一件か?それでなのか?


その日のホームルームはいつもより長かった。

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