第9話
ここはどこだろう?
暗い。ただ、黒い。
真っ暗闇に、僕は放り出された。
夢だとしても、いい夢ではない。
「……君」
誰かが呼ぶ声。
誰だろう。僕は覚えがないのだが。
「…君!…」
「落ち着け、もうちょっと!」
「だって……」
話し声。男の人と、女の人。
声に、聞き覚えがあるような気がするのだが、全く分からない。
でも、なぜか、その人が僕のことを呼んでいることは瞬間的に分かった。
返事をしようとしたが、口が動かない。
体も動かない。ただ驚いている姿勢で硬直している。
僕の名前。
ここに来てからもう大体1時間はたったはずなんだけど、まだ起きないときたか。
一樹君。
「……ん…」
「!!一樹君ッ」
ここに来て初めて反応した気がする。
ずっと眠りっぱなしもある意味スゴいよ。
「古泉君!」
「だから二人とも落ち着けって!ここ病院だろ?」
「あっはい、スミマセン」
「この状況で、落ち着けるわけないでしょ!?」
「病院なんだぞ!他の入院患者のことも考えろ!」
「……分かったわ」
ハルヒさんは、渋々頷いた。
「…………う」
「!!!」
瞬間、考えが浮かんだ。
このまま寝かせてちゃダメ!
「一樹君!!」
「何度言わせんだよ!静かにしろって!」
「ダメ!…ダメ」
「なにがだ?」
「このまま寝かせてちゃいけない…」
「は?」
ポカーンという顔になった。
そりゃーなぁ。
と、そこで起きられた。この状況でかよ。
まぁいい。病人に愚痴言っても仕方ないからね。
「一樹君…!」
こっちもこっちでポカーンとしている。
まさかじゃないだろうね。
「………?」
あ、これまさかかもしんない。
なぜかって?一樹君の頭にクエスチョンマークが沢山浮かんでいるから。
「……え、っと」
「古泉君!!!」
やっと事態を把握したらしいハルヒさんが、大声で叫んでた。
なにがなにやら。
「失礼ですが」
と前置きしてから、粗方予想していた答えを持ってきた。
「あなたたちは、誰ですか?」
この質問で、二人ともすっかり毒気を抜かれてしまったらしい。
「一樹君、私のこと覚えてないの?」
「はい」
フツーに返してきやがった。
「そっか、じゃあ知らないと思うけど」
「はい?」
「SOS団。…覚えてないかな」
「……」
考え込む素振りを見せてから、こう言った。
「聞いたことなら」
聞いたことなら、か。
大半失われてるけど、少し残ってる部分もある、ってことね。
「昨日のことって覚えてる?」
感覚的には今日だけど、もう既に0:00は越えてしまってるからね。
「………」
「…あ、えっと、無理に思い出さなくてもいいんだからね?」
「…………ぁ」
昨日あったこと。
僕が家で、頭が痛くなったこと。
なぜかは知らないけれど、プラスして吐血もついてきたこと。
誰かに連絡しようとして、思い止まったこと。
そこからだ。覚えていないのは。
あの感覚。あの頭痛の感覚は、この痛みと同じだ。
頭が痛い。それはなんの前触れもない。
「………ッ!!」
「ちょ、一樹君!?」
突然のことだった。
あの質問をした後、古泉が頭を抱えだした。
どうやら痛むらしい。
昨日のこと。何があったんだ?古泉よ。
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