第1話③ 魔法✟少女になりたいかな?
「助けて!誰か!」
まただこのやろう! 何処の糞ガキだ! これだから昼間はダメなのだ。
だから夜中心、昼夜逆転生活をしていのだ。
昼間に観るのは基本的には二回目以降のものかあまり対して面白いとは思わないものにしているのだが、それだと時間が足りないし、明け方に切った話の続きも気になって仕方がない場合には対処できない。
「助けて! 誰か助けて!」
「しつこいぞ! 静かにしろ!」
俺は絶叫しながら枕を部屋の壁めがけて投げつける。完全に八つ当たりだ。
それだけ俺は苛ついていた。何度も言おう。俺は誰よりもアニメが大好きだ!
そしてその時間は誰よりも大切にしたいと思っている。故に、俺にとってアニメの時間を邪魔されることは許しがたいことなのだ。それだけで万死に値する!!
なのに!
クソッ! 俺はやり場のない怒りを布団にぶつけそして頭を掻きむしる!
「くそったれ! アニメが見たい! アニメの邪魔をするな!」
「現実なんてクソだ! アニメさえじっくり見れない! 現実なんてもうやだァァァ!」
俺は、ベッドの下の収納棚、クローゼット、タンス、衣装ケース、机の引き出しを次々に開け放つ。こんなことして何のみ意味も無いというのに……
そう。この時、俺は完全に狂っていたのだ。
アニメが見れないことに極度のストレスから、精神的ダメージはマックスだった。
俺は部屋中をそれこそ興奮した猛獣のように歩きまわって、あちこち散らかし回った。 ンスの中の服を引っ張り出し、ゴミ箱を蹴散らし、机の引き出しを勢い良く引いて振り上げようとした。
「だあぁぁぁぁぁッ!」
その時だった。
「ふえッ」
そんな声がした。もちろん、声の主は俺でない。
俺はテレビを一瞥した。だが、DVDは停止されたまま。現実のくだらぬムダ話しかしないバラエティしかやってない地上波なんて見るはずもない。
だとしたら…… いや、それ以上に気になるものがある。人形だ。
大きさというか、身長は十五センチ弱。
やや青みがかった黒髪をした、十三、四歳くらいの女の子を模している。
身につけた衣装は、ファンタジー物によく出てくるような短いマントに、体にぴったりくっついた胸と胴体の部分だけの甲冑を模したコスチューム、そして、太ももが透けて見えそうな半透明のプリーツスカートを履いていて、背中には半透明の少し光を反射して虹色に耀いた、蝶のような四枚羽を背負った、妖精の人形。
それが横たわっていた。
なんだこれは? こんなフィギュアを買った覚えはない。
第一、こんなアニメ知らないし、それに俺の興味対象は基本的にアニメ作品のDVDで、それを取り巻くグッズなどおまけでしかないから、よほど気に入ったものか、造形が素晴らしいものでなければ、そこらのオタクのように無闇矢鱈に買ったりしない。
なので買ったフィギュアは瞬きする間で判別できるし、どれも正確に覚えているはずだ。
それに、
「こんなキャラ知らねえぞ」
それは買った覚えがないばかりか、そもそもこんなキャラクター、見たことがない。
俺が知らないということは、オリジナルか余程のマイナーなキャラだ。
一体これは何なのだろ……
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