第1話① 魔法✟少女になりたいかな?
俺の名前は石村高師、元気いっぱい、青春真っ盛りの十六歳だ。
今日も寝坊した。いつもの事だ。別に咎められることはない。
なぜかって? そりゃ決まっているだろ? 学校には行っていないからだ。
いや違う、不登校ってわけじゃない。
ニート? それも違うぞ。
もちろん、俺がこうして平日の昼間からジャージ、Tシャツのパジャマ姿で悠々としていられるのにはきちんとした理由がある。
なぜなら俺は既に高校を卒業したも同然なのだから。それもたった一年で。
はじめに断っておくが、この日本に飛び級制度は存在しない。時折、十六歳ですでに大学を卒業したとか、そいう設定のアニメキャラが居るが、現実には無理だ。
そりゃ外国に留学して、向こうの大学を出たとかならあり得るが……
まあそんなことはどうでも良い、肝心なことは、俺はすでに、一年の時に高校卒業レベルの勉強を一人で勝手に終えてしまったといこと。
そしてだからわざわざこの平日の昼日中、学校などと言う七面倒くさい所に出かけなくとも、最低限の出席日数だけ顔を出しておけばまったく問題が無いという……
――そういうことなのだ。
――てな感じで、物語の序盤の主人公ぽく、脳内ナレーションをやってみた ――
ああダリィな……
俺は、生あくびをしてベッドから起きあがった。
徹夜明けの朝は疲れる。
正確には、午前七時、家族みんなが起き出した頃に、眠りについたのだから徹夜ではないのかも知れないが……、いや夜を徹したという意味では徹夜と言って差し支えはないのかもしれない。
ともかく、思い頭を抱え、夜中に食べたカップ麺のせいで、もたつく胃を押さえながら、部屋を出て廊下を歩き、階段を降りて一階の洗面台の前に立った。
鏡に写った自分を見る……
眼の下にクマ、そして充血した目、何となく青白く不健康さを感じさせる顔色。まるで主人公足り得ない。
俺は心底落胆した。
それだけではない。メガネを掛けてよく観ると、ところどころに黒い点、無精髭が点在する。俺はさらに幻滅した。
もちろん男なのだから、思春期まっただ中なのだから、髭が生えてきても、おかしくない。むしろ当然のことだ。
勘違いされては困るので、先に行っておくが、決して女装趣味があるとか、男である自分にコンプレックスを抱いているとか、そういうこともはない。
そう俺が幻滅しているのは……
おっさんの階段のぼるー♪ この現実にだ。
なぜかって? そんなも決まっているだろう。大人になんかなりたくないからに決まっているだろう。いやもっとはっきり言おう、そう、俺は大人どころかこの世の人間ですらありたくないと思っている。俺がなりたい物それはすなわち……
アニメの主人公だ!
要するに、俺はこんな腐った現実に幻滅している! だから俺は二次元に行きたい!
そう思っている!
なのに、こうして俺は歳を取る一方、しかも最悪なことにあと一週間で九月十日。
すなわち俺の誕生日。誕生日なら嬉しいだろう? おめでとうって言ってほしいいだろうって?
なわけない!な ぜだか分かるか? 分からないのか豚野郎!
いいかよく聴け! アニメの主人公の年齢は往々にして十代中頃、例えば某ロボットアニメなら十四歳、某願い事が叶うボールを集める話も十四歳だ。
要するに、物語の序盤で登場する主人公の年齢は中学生かせいぜい高校1年生がほとんどなのだ。
もちろん物によっては(青年誌系の話であれば)十代後半から二十代前半という話もないわけではない。
だがしかし、これだけは言える、年齡を重ねるごとになれる主人公の数は減っていく一方であるということ。
(※あくまでも個人的見解です)
俺に残された選択肢は少ない。そしてそれは好いたずらに年を重ねるごとに減っていく一方なのだ。なのに、どうして、いつまでたっても! 二次元に行けないのか!
二・次・現・に・行・き・た・いっ!!
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