第6話

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 正直に言って小型宇宙艇に三人も乗ると、とても窮屈だった。しかもアンドロイドのセティを除いた二人は、安全の為に簡単なヘルメットを被っている。まぁそこで生活出来るように作られた探査用シャトルと違って、小型宇宙艇は移動する時の乗り物でしかないのだから。しかしスピードが速く機動性に富んでおり、他の宇宙船とドッキングするには最適の乗り物だ。とは言っても、狭い宇宙艇の座席に何時間も座っているのはやはりきつい。それにじっと座席に座っていると、嵐に覆われたキンナラとそこに住む透明な岩達の事が、頭に浮かんでくる。

もう大嵐が起こってから随分と時間が経ち、嵐もだいぶ収まって来ている。本来なら嵐が収まり次第キンナラに降りられるように、準備をしているはずなのだが。それより透明な岩達は大丈夫なのだろうか?  キンナラの自然に合わせて身体を進化させ、大嵐を何度も潜り抜けて来たであろう透明な岩達が、この大嵐に耐えられないはずがないのだが、やはり気になってしかたがない。大丈夫なんだろう。ちゃんと嵐に対応しているんだから。嵐から身を守る為の、細かな結晶の粒に覆われた透明な岩の姿を思い出しながら、クレイスは自分自身に言い聞かす。

「ほら、難民船が見えてきたわ」

グェンの声がクレイスの意識を、透明な岩達から座席全法の窓に姿を見せた難民船へと向けさせる。

「これが難民船クーザね」

クレイスは、少し筒大きくなっていくクーザの姿をじっくりと見詰めた。球体をした居住区に短い円筒形の機関部を取り付けた形の、灰褐色をした宇宙船……まだ宇宙を旅する人間達が、途方も無く長い旅の間を、人工冬眠で過ごさねばならなかった時代の恒星間飛行船だ。今はほとんど使われていない形式の宇宙船なのに、クーザの機体にはほとんどいたみは見られない。故郷を出てから十年以上、どのようにして宇宙を旅して来たのだろうか? 新しい疑問がクレイスの頭に浮んだが、あれこれ考えてもすぐに答えは見付からない。ただはっきりしているのは、クーザが運の良い宇宙船だと言う事だけだ。

「さぁ、もう少しだよ」

操縦席のセティがクーザへの到着が近い事を知らせ、クレイスとグェンはクーザとへ入る準備をする。クレイスは座席横のフックに掛けていたコンピユーター端末を取り出してキーボードを叩き、クーザのコンピューターシステムに小型宇宙艇の位置を知らせ、宇宙艇の収容を依頼する。隣の座席ではグェンが手に持っていた医療用センサーを作動させて点検をしていた。

「了解、そちらの位置と姿を把握しました。これから誘導ビームをそちらに照射しますので、ビームに沿って飛行を続けてください」

端末のモニターにクーザからの合成音声のメッセージが届き、宇宙艇の三人は窓いっぱいに広がった難民船クーザの姿に注目する。

「ほら、来たぞ」

クーザの機関部から小型宇宙艇に向けて光が発せられると、セティは操縦席の制御盤を操作し、宇宙艇が誘導ビームに沿って進むようにした。これで宇宙艇は自動的にクーザのドックキングポートまで飛行し、クーザに収容されるはずだ。クレイス達はさらに大きくなっていく難民船を見ながら、クーザへの到着を待った。

 小型宇宙艇がクーザの機関部に近付くと、クーザは誘導ビームの照射を止めて機関部の側面にあるハッチを開き、小型宇宙艇をクーザの宇宙艇専用のデッキに迎え入れた。クレイス達の小型宇宙艇が円形をしたデッキに着地すると、クレイス達はハッチが閉まってデッキに出られるようになるのを待った。その間クレイスは、窓からクーザの内部をじっくりと見詰めた。

「これがクーザの内部かぁ」

クレイスの目に入ったのは、倉庫の扉らしいものが幾つも付いている壁に囲まれた、広い円形のデッキとそこに止まっている幾つかの宇宙艇、それにデッキの真ん中を貫いている四角柱のエレベーターシャフトだった。おそらくこのエレベーターは、人間やロボットが居住区と機関部を行き来する為のものだろう。でも、人やロボットの姿は見えない。

「さぁ、もう出てもよさそうだよ」

セティが制御盤のディスプレイに外に出ても安全だと言う表示が出たのを確認すると、クレイス達は宇宙艇を出て宇宙艇専用デッキに降り立った。クーザがまだ難民船でなかった時には、小型宇宙艇で乗り込んで来たクーザ乗客達が、降り立った場所だ。ちゃんと人工重力が効いているデッキに、安全の為ヘルメットをしたまま降り立ってすぐに目に付いたのは、広い格納庫に収納されている七機の大きな宇宙艇と、小さな宇宙艇の姿だった。七機の宇宙艇はほとんど無傷だったが、無人宇宙艇の方はかなりな衝撃を受けたようにひどく傷んでいる。まるで壊れて宇宙を漂っていた物を、クーザが拾ったみたいだ。他に何か異常は無いだろうか? クレイスが改めてデッキを見回し、無人宇宙艇以外に異常がないかを調べようとした時、エレベーターの籠が透明なエレベーターシャフトを通って来るのが見えた。エレベーターの籠は宇宙艇用のデッキに到着すると扉を開き、金属の床の部分以外は透明な籠に乗っていたロボットを降ろした。

「ヨウコソ、イラッシャイマシタ」

下半身がロングスカートをはいたような形をして、幾つもの関節がある腕を持つロボットは、クレイス達三人の前で止まると右腕を上半身の前で曲げ、昆虫に似た頭をゆっくりと下げてお辞儀をする。何とも大げさな仕草だ。ホテルなどで清掃やベッドメイクなどをするロボットを何処かから手に入れ、難民船の雑用に使っているみたいだ。クレイスそう推理した。そしてロボットが次に発した言葉で、クレイスの推理が確かなのが、明らかになった。

「オキャクサマガタ、コレカラめいんぶりっじヘトゴアンナイイタシマススノデ、ワタクシノアトニツイテキテクダサイマセ。コノえれべーたーハ、チョクセツめいんぶりっじニツナガッテイルえれべーたーデス。サァドウゾ」

腕をエレベーターのドアに向けたロボットの発した言葉は、完全にホテルの案内ロボットのものだった。無骨な難民船の内部の様子と場違いなロボットの仕草に苦笑しながら、クレイス達はエレベーターに乗り込んで行く。

 クレイス達三人がエレベーターに乗ったのを確認すると、案内ロボットはエレベーターに移動し、エレベーターの籠の透明な壁に浮かんだタッチパネルを細い金属の指で触れるとエレベーターを動かした。扉が閉まり、籠がシャフトを移動していくと、何層にも別れた難民船の内部がシャフトの外を流れるのが見える。機械が所狭しと置かれた階層を通り抜け、倉庫らしき階層を通り過ぎ、キャビンの扉がずらりと並んだ居住区を二つ抜けると、エレベーターは難民船のメインブリッジに到着する。

「サァ、ドウゾ」

エレベーターの扉が開くと案内ロボットは、エレベーターの籠からメインブリッジに腕を伸ばしてクレイス達に外へ出るように促し、クレイスとグェン、そしてセティは人気の無いフリッジに足を踏み入れる。

「ココデハへるめっとハヒツヨウアリマセン。ドウゾクツロイデクダサイ。デハゴユックリ」

エレベーターに残った案内ロボットは頭を下げて挨拶すると、籠の扉を閉めてエレベーターを動かし、ブリッジから消えて行った。

ブリッジに残されたクレイスとグェンはヘルメットを外すと、腰のベルトについているフックに引っ掛けてからブリッジの中を見回した。クレイス達がロボケットに案内されて来た場所は、クルーや乗客か集まって船長の指示などを聞いたり、集会を開いたりするホールの様だ。壁には大きなスクリーンがはめ込まれ、その前には立体映像装置がある。そしてスクリーンの反対側の壁には、コックピットや船長室などの、重要エリアへの出入口と思われる扉があった。ひどく重々しい感じがして、セキュリテイ装置が厳重に取り付けられているようだ。宇宙船を乗っ取ろうとするような人間からコックピットを守る為には、当然必要な措置だ。そこに入るには、クーザの乗組員の助けが必要だろうが、ブリッジには、人間の姿は見当たらない。いや人間どころか、ロボットの姿もない。もっとロボットが船内で活動しているものと思っていたのだが……。

「気味が悪いわね、誰もいない宇宙船なんて。異常だわ」

閑散としたホールを眺め回しながら、グェンが呟く。そう、いくらロボット操縦の出来る移民船だからといって、全てをロボットに任せて人間がみんな人工冬眠に入ってしまうような事は考えられない。人工冬眠を必要とする恒星間宇宙船では、乗組員は必ず幾つかの班に分かれ、一つの班の乗組員が起きてそれぞれの仕事をし、その他の班は交代の時間が来るまで人工冬眠に入っているものだ。ところがクーザに乗り組んだ難民達は目的地に着くまで、全員が人工冬眠に入ると言う選択をしてしまった。おそらくそうする事で、食料が不足になるのを防ごうとしたのだろうが、危険の伴う選択だったと言えるだろう。ロボットで出来ない高度な判断を必要とする事態が、何時起こるかも知れないのだから。いや、今まさに起こりつつあるのだ。早くこの難民船を止めなければ……。その為には、まずクーザを操縦しているロボットと対峙しなければならない。クレイスは新ためてブリッジを見回し、クーザを動かすロボットを探す。一見するとロボットらしきものの姿は見えない。だが同じようにブリッジ内を見ていたセティは、すぐにある物を探し出した。

「ほら、あれを見ろよ」

セティはホールの天井になっている場所を指差し、そこにカメラがはめ込まれているのをクレイスとグェンに知らせた。しかも天井の穴にはめ込まれたカメラは、穴の中で目玉の様に動いている。

「ようこそ」

カメラがクレイス達の姿を捉えると、男性の声がしてホールのスクリーンにクーザの姿が映し出された。ロボットが姿を現したのだ。

「私はクーザの航行を管理するコンピューターシステム、セラフィーです。みなさんを歓迎します」

ぎこちなくはないが明らかに人間のとは違う声がホールに響くとその声に合わせて、スクリーン下のスピーカーが光る。カメラでの目でクレイス達を見付け、スクリーン装置を使って話し掛けているのが、クーザを動かしているロボットの正体だった。正確に言えば、クーザのロボット航行システムを動かしているコンピューターなのだが。

「こんにちは、セラフィー。私は惑星開発機構の惑星探査員クレイス・グレイ。よろしく」

クレイスがセラフィーに挨拶すると、次にグェンとセティがそれぞれセラフィーに自己紹介をし、その度に天井のカメラが手か滅し、三人の姿を記憶している事を知らせていた。

「クェン・リー。惑星探査船イオストルの船医です。よろしく」

「私はイオストルのシャトルバイロット、セティ。よろしく」

三人が挨拶を終えると、スクリーンに映し出された移民船クーザの姿が、がっしりとした体格で浅黒い肌の、壮年男性の静止画像に替わり、再びセラフィーの声がブリッジのホールに響く。

「みなさんにクーザの船長、ジェイミー・ツツを紹介します。彼が難民達を率いてクーザ乗り込み、パラダイスb7へ向かう旅へと導いた人物です。そして彼は、私にクーザと難民を任せて、人工冬眠に入りました。さぁ、しばらく船長のジェイミー・ツツのメッセージを聞いてください」

セラフィーが静止画像の船長を紹介すると、天井のカメラの光が消え、静止画像が動きだした。

「私は恒星間移民船クーザの船長、ジェイミー・ツツです。今は人工冬眠中で直接お会いできませんが、セラフィーがみなさんの訪問を許可したので、みなさんを歓迎します」

スクリーンの男性、クーザの船長は自己紹介と歓迎の挨拶をすると、続けて自分達の事を話し出した。

「私達はクローン人類への迫害から逃れる為に、ロライマ・コロニー群からパラダイスb7へ向かう難民の一団です。女性五十三人、男性四十九人、総勢百二人の集団でそのうち十七人が子供です。私達は食料などを不足ささない為に、全員が人工冬眠に入る決断をしました。このメッセージは、人工冬眠中に人がクーザに乗り込んで来た時の為に作成したものです。みなさんが誰なのかは解りませんが、私の替わりにクーザを取り仕切っているコンピューター、セラフィーが乗船を認めたのでしょうから、クーザへの滞在を許可します。ただし、期間はクーザでの用事が終るまでです。みなさんがしようとしている事を済ましてしまったら、なるべく早く立ち退いていただけるように、お願いします。では、ごゆっくりと」

メッセージが終るとスクリーンから船長の姿が消え、再びクーザの画像が現れた。

「これで船長、ジェイミー・ツツのメッセージは終わりです。みなさんがしようとしている事をしてくださって、結構です。ただ、活動を始める前に、活動の内容を私に詳しく説明していけたらと思います。よろしいでしょうか?」

セラフィーに言われ、クレイスはさっそくスクリーンに向かい、クーザでクレイス達が行おうとしている医療活動について、詳しく説明する。本当の目的は、セラフィーには隠しておいて……。

「私達はこの船の難民達の健康状態を調べにきました。クーザの難民の保護は、クーザを発見した惑星探査船イオストルの義務なのです。まず人工冬眠中の難民達の健康状態を、人工冬眠装置のモニターを見て確認します。この時、健康に健康状態に問題がある人を見付けたら、ひとまず人工冬眠装置を止めて、グェンが持っている医療用センサーで詳しい検査をします。さらに何等かの治療が必要だと判断したら、その場で治療します。これが難民達の健康調査の手順です。難民達の健康の為に、私達を人工冬眠中の難民に合わせて下さい」

クレイスは自分自身に落ち着くよう、心の中で言い聞かせながらコンピューターに説明する。おそらくセラフィーは、天井のカメラの目でクレイス達を観察し、不信な行動をしていないかを調べているだろう。実際、セラフィーの目である天井のカメラはクレイスが説明をしている間、くるくると動いていた。そして説明が終って誰も話しをしなくなっても、以後いている。

「よろしいです。人工冬眠室に案内しましょう。まずスクリーンと反対側のドアの前に、顔がドアのカメラに映る様にして立って下さい」

セラフィーは、クレイス達を難民に合わせても大丈夫だと判断したのだろう。クレイスとグェン、セティの三人はさっそく重々しいドアの前に立ち、セラフィーの指示の指示どおりにした。三人がそれぞれドアの真ん中に取り付けられたカメラを覗き込むと、一瞬カメラの光が瞬き、カメラが三人の顔を映したのを知らせ、暫くするとドアはゆっくりと開き、ドア側の壁と透明な強化ガラスの壁に挟まれた通路が見えた。

「今、みなさんの顔はクーザの全てのコンピューターに認識されました。これでみなさんは、クーザの何処へでも行けるようになりました。これから人工冬眠中の難民達の元に案内します。さぁ、どうぞドアの中へ入って下さい」

クレイス達はセラフィーに促されて最重要エリアに足を踏み入れ、ドアが閉まったのを確認すると強化ガラスの壁に近寄り、クーザのコックピットの様子を見る。コックピットがあるのは通路から三メートルほど下のフロアで、通路からは誰もいないコックピットを見下ろせた。やや広めのコックピットの空間には、船長席を中心に数多くの計器に囲まれた操縦席や通信士席、モニター画面の着いた幾つかの座席が並べられている。しかしその座席には誰一人、人間は座っていない。完全な無人だが、計器類はちゃんと動いているのが見て取れる。そのコックピットを、クレイス達が立っている通路が取り囲んでいた。

「この通路の左手に進むと、居住区に向かうエレベーターが見えてきます。みなさんがエレベーターの前に着くと、エレベーターの扉が開きますので乗り込んで下さい。後は私がみなさんを人工冬眠室に案内します」

セラフィーの声が通路に響き、クレイス達は通路を見回し、声が聞こえて来る場所を探す。

「此処ですよ。私はブリッジの何処にでもいるのです。自動操縦のロボットを動かしているのも、私です」

今度ははっきりと天井から声が聞こえてきたので見上げると、天井にカメラとマイクが取り付けられているのが見えた。どうやらセラフィーは、ブリッジ全体をコントロールしているらしい。クレイス達はセラフィーのカメラに見守られながら通路をエレベーターまで歩くと、扉の開いたエレベーターに乗り込んだ。

「よろしいですね。これから人工冬眠室に向かいます」

セラフィーの声が今度はエレベーター内に響くと、セラフィーが動かすエレベーターの籠が動き始めた。

「さぁ、此処が人工冬眠室です。どうぞ降りてください」

ほんの二、三分でエレベーターの動きが止まり、セラフィーの案内と同時に扉が開き、クレイス達は人工冬眠装置が並ぶ人工冬眠室に足を踏み入れた。

「私はみなさんが難民達の健康調査をするのを許可しました。エレベーターの横に人工冬眠中の人達の情報を記録したタブレットがおいてあるので、それを健康調査に使って下さい。これから先の活動は、みなさんの責任でお願いします」

セラフィーの声はクレイス達に後を託すと聞えなくなり、グェンがエレベーター横のフックにかけて掛けてあったタブレットを手にすると、無人のエレベーターの扉が閉まった。セラフィーは難民達の健康調査を、完全にクレイス達にまかせたようだ。もっとも、何処かでクレイス達をみているのだろうが。クレイス達はセラフィーの目を気にしながら、さっそく人工冬眠中の人達の健康調査を始めた。

 人工冬眠室は、その名通り人工冬眠中の人間達が集められている区画だ。広い空間にカプセル型の人工冬眠装置が、数多く並べられている。さらに部屋の隅には上に上がる階段があり、人工冬眠室が二階建てになっているのが解る。クレイス達は人工冬眠装置の一つに近付くと、グェンが透明な人工冬眠装置の蓋の上に翳していく。

「キャリー・メイ、二十七歳……」

タブレットの画面に人工冬眠装置で眠る人間の情報と今の健康状態を示すデータが現れ、グェンがその情報を読み上げていく。その間クレイスとセティは、人工冬眠装置の中で、白いゆったりした衣類を着て眠る女性の顔を見詰めていた。

「以上、問題無し」

グェンはタブレットの画面に表示された女性のデータを読み上げ終ると、隣の人工冬眠装置に向かい、同じようにタブレットを人工冬眠装置の上に翳してから、データを読み上げた。

「ミク・コムロ。八歳……」

グェンが次に読み上げたのは、まだ幼い男の子のデータだった。これも異常無しとされ、グェンはその隣の人工冬眠装置に向かい、中で眠っている老婦人のデータを読み上げる。

「リリ・ケイラ。七十八歳……心臓に問題がある様子だけど、今は大丈夫……」

グェンがタブレットに表示された人工冬眠中の難民達のデータを読み上げている間、クレイスはクーザの船長が眠る人工冬眠装置を探した。ゼノビア船長に言われた通りにクーザの最高責任者を起こし、自分達が向かおうとしている惑星が、架空の存在なのを、知って貰う為に。しかしずらりと並べられたられた人工冬眠装置の中から、船長の人工冬眠装置を探し出すのは難しそうだった。クレイスはセラフィーが見せてくれたメッセージの船長の顔を思い出しながら、人工冬眠装置に眠る難民達の顔を確かめて行く。また難民達の顔を確かめながら、軽く難民達に感応力を使い、人工冬眠から目覚めそうな人がいないかを調べていた。人工冬眠からめざめそうな人がいたら、すぐに目覚めさせてケアをする必要があるのだ。感応力を使いながら人工冬眠装置の間を歩き回り、何十人かの難民の顔を確かめた時、クレイスはようやくクーザの船長、ジェイミー・ツツを探し出せたのだった。

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