第4話

彼女はどうやら2限目から授業に参加出来たようだ。

教室に入った瞬間に友人たちからの慰めや叱責で揉みくちゃになっているらしい。

使い魔の影蛇からの彼女のそう言った報告を受け、頬が自然とゆるゆるになってしまう。

その片手間で書類仕事を行なっているから気を緩めることはできないが。

「…白鹿様はほんに変わってらっしゃる…魔法少女を愛玩動物として可愛がるのではなく……」

影蛇のじっとりとした訴えなどこれっぽちも気にならない。だって彼女を可愛がるのは自分にとっては息をすることと同意義だからだ。

しかし使い魔からの嫉妬を無視するのはまた宜しくないため、普段の褒美の意味も込めて後で可愛がってあげよう。

そう拗ねないで欲しいと言いたいところだが、学生が大勢いる中で影にいる影蛇に話しかけるなんて変人以外の何者でもなく、最近はそう言った行動を少しでもすると直ぐに狂人扱いだ。世知辛い。

ふぅ、と軽くため息をついて軽く伸びをしていると私の影に他の影が重なった。

「あっ、し、白木さん」

「…黒木君!おはよう〜どうかしたの?」

席に座っていると、彼の高身長が尚更威圧感をかけてくる。

前髪をその真っ黒な髪で隠して、しかし此方をまっすぐと見つめてくる彼の名前は黒木透。神社の息子であるからか、よく勘が働く将来が楽しみな子の一人だ。

「今、足元に何かいなかった?」

ほら鋭い。

彼は小さい頃から魔がつくものと触れ合ってきているからか魔人である私の些細な言動に、すぐになにかしらツッコミを入れてくる。

しかし今自分が魔人だとバレても面倒なことしか起きないので、だいたい誤魔化す。

「えっゴキブリ!?」

「きゃーーー!!うそ!しらぎんゴキブリいんの!?」

「しらぎんこっちこっち!」

「えっあっ、ちが」

ちなみにしらぎんとは白木祐という私の偽名のあだなである。

「黒木あんた早くゴキブリやってよ!」

「しらぎん大丈夫?」

「大丈夫〜」

さて、今回もなんとか免れたが、毎回というわけではないだろうな。

また手を打っておかないと。

私は友達の温かい胸の中で揺られながら、非難されまくっている彼に目を向けた。

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