28-10
マズいのは言うまでない。
俺だったらどうするかなんて考えても、すでにピッチの外にいるからどうしようもない。
「飛鳥、退け!」
ベンチからまだシュートを外したショックから立ち直れていない飛鳥に声を掛けたけど……飛鳥も限界か。
立ち上がったものの、帰陣するその足取りは重い。
この時間まで守備に攻撃に奔走していたから無理もないけど、ここはディフェンスに一枚でも守備に戻ってほしいところ。
「瀬野は!?」
瀬野はすでにディフェンスに戻りつつあった。
飛田っちが少し時間を作ればその間に嶺井さんと瀬野は追いつく。
飛田っち、なんとか持ってくれ。
ふーん、このセンバはついてきたか。
まぁ、想定内だけど。
キーパーからのスローイングをそのまま大きめにワンタッチし、流したボールからドリブルを開始。
そのまま独走するつもりだったけど、この5番のディフェンスが追いついてきた。
一度ボールを止めると、5番はすかさず俺の前コースを拒むように立ちはだかった。
緩急で抜くか。
それにしても隙が無い。
加速した瞬間にボールを奪われそうだ。
ゴールを背にし、半身で構えた5番は一定の距離を保ちつつも、いつでも奪いにくることのできる立ち方。
厄介だな。
このまま時間を掛ければプレスバックで挟みこまれる。
行くならもう仕掛けないと。
「皆上、後ろを使え」
後ろの方から声がした。
紫夕館の戻ってくる選手に混じり、柿庭さんが走ってくるのが見えた。
考える間もなく、ボールを落とした。
おそらく、ボールを拾えるかどうかは五分。いや、相手の方が数的優位だからもっと低いかもしれない。それでも迷いなく前に走る。
あの人なら、俺がラインブレイクする速度に合わせて裏にパスが出せるということを確信して。
走れ。
お前がこの中で一番元気だろう。
そう言い聞かせながら、必死にディフェンスに戻る。
「瀬野!」
ベンチから心配そうな顔をした狗宮がこっちを見て叫んでいた。
大丈夫だ。
必ず追いつく。
18番は追いついてきた飛田さんのディフェンスを嫌ってか、バックパスを選択した。
そのボールはあえて無視した。
俺がその競争に加わっても勝ち目が無いことは分かったからだ。
途中、柿庭大地の体勢を崩すために体をぶつけにいった村山さんが逆にぶっ飛ばされるのを見たからでは決して……ない。
それに柿庭大地は、必ずこの18番にもう一度パスを出す。
それは絶対に阻止する。
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