28-6

 新たに出てきた背番号17は、どこかで見たことがある気がする。

「お前、一年だろ」

「だから?」

「多分見たことがある」

「あっそ」

 感情の無い目が俺をなぞる。

「君、上手いけど。俺は君のプレー好きじゃないな」

 自分勝手過ぎる、と17番はそれだけ言って少し距離を取った。

 こいつは俺のマークコースを消すために投入されたはず。

 その証拠に、俺とボールホルダーを結んだライン上を常にポジション取っている。

 そんな程度の奴にプレーを批判されたことに、少しカチンとくる。

 俺のプレーが好きじゃない? 何様のつもりだ。

 絶対ぶち抜いて、この試合決めてやる。


 あいつなんだ?

 明らかに自分も一年のはずなのに、お前一年だろ、って。そうですけど何か。

 言わなくてもいいことまで言った気がするけど、あの18番のプレーが自己中心的で嫌いなのは嘘じゃない。

 なんていうか、自己犠牲の塊である狗宮と真逆のプレースタイルだと思う。

 全てのボールを自分に集め、シュートまで持っていく。

 その後のディフェンスなんてほとんどしないから、こっちとしては楽ではあるけど。

 新戸さんからパスをもらうと、ほとんどノープレッシャーで反転し、前を向く。

 あのデカい人が小林さんのマークで忙しそうだから、小林さんにはパスは出せないものの、サイドの村山さんが受けれそうな位置を取っている。

「村山さん」

 香野を経由しても良さそうだったが、村山さんにロングフィードでパスを送る。

 村山さんは、綺麗にファーストタッチで収め、すぐに近くに降りてきた王様に当てる。

 王様がディフェンスを背負いながら、上がっていった香野にボールを落とすと、香野はポケット(ニアゾーン。ピッチを縦に5分割したうちの内側3列のゴールに近いエリア)に走った村山さんにパスを通した。

 相手ディフェンスがオフサイドと、手を上げるがオフは無い。

 俺もマイナス(攻撃方向と逆方向)のパスを受けるために、未だに徹底的にマークにつかれている小林さんを追い越し上がっていく。

 すぐ横を通り過ぎる時に、何か言いたげな表情をしていたけど無視。

 多分、マイナスのボールを俺によこせとかそんなとこだろう。

 残念ながら今の小林さんにパスを出すのは、リスクが高過ぎるし、それを自覚しているからこそ何も言わない、言えなかったんだろうな。

 そんなことを考えながら、周囲を見渡すと自分がフリーになれることが分かった。

 バイタルエリアに入りながら、ドリブルで仕掛けている村山さんを呼ぶ。

「村山さん」

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