塔南大付属高校戦3

28-1

 皆上和樹。

 俺と同じ指定強化選手であり、奴と初めて会ったのは、今から一年以上前の地域別練習会だったと思う。

「お前デカイな」

 そう言われた方を見ると、同じ高校生かと疑うほどの小さな奴が立っていた。

「お前何年?」

「は? 高一。もうすぐ、高二。今回初選出なんだぜ」

「だよな」

「なんだよ、俺の身長が低いからか? つか、お前デカ過ぎだろ。サバ読んでんじゃねぇのか」

「いや、中学からこんなもんだが」

 俺は中学の頃から185くらいはあった。

 そのせいで小林からはその体格活かしてキーパーをやりましょ、と言われたものだ。

 ちなみにまだ伸びている。

「羨ましいねぇ」

 だけど、デカい奴には負けねぇよ。

 皆上はそう言うと、練習から俺と張り合ってきた。

 簡単なミニゲームになると、この小ささでこいつがここに呼ばれている理由が分かった。

 本当に捕まえられない。

「へへ、見かけだけか?」

 ポジションこそ俺の直接のマークではないものの、マッチアップした全ての局面で抜かれた。

「お前やるなぁ」

 俺は皆上がすぐに気に入った。

「お前、どこ高?」

「灰燕」

 灰燕のレギュラーだと聞いて納得した。

「お前は?」

「塔南大付属」

「マジ? 頭良いじゃん」

 練習が解散になった後も、二人でダベリながら牛丼屋に入った。

「お前めっちゃ食うな」

「え? そうか」

 今日は夜飯も食べるつもりだから、セーブしながらメガの二つ目に取りかかっていると、皆上はちょっと引いていた。

「お前こそ食えよ、小さいんだから」

「うるせぇよ」

 あ、と何かを思いついたように手を叩く。

「俺の弟がいるんだけど」

「うん」

「結構頭良いんだよな」

「へぇー、何年?」

「まだ中二だけど。あいつの頭だったら塔南入れんじゃねぇかと思ってさ」

「弟もサッカーやってんの?」

 やってる、と皆上は頷いた。

「俺と同じトップからウィングまで前の方ならどこでもできるタイプ」

 ただし、小っせぇけど、と皆上は笑う。

 お前も小っせぇけどな。

「弟は灰燕に行かねぇの?」

「俺と同じとこが嫌だとよ」

「えー、上手いなら行けばいいのに」

「俺はお前のとこ行ったら面白いと思うけどな」

「塔南に?」

「そう。そして、高総体で俺と対戦する」

 灰燕とか、面白そうじゃねぇの。

「プレーお前に似てるんだろ? そしたら、面白くなりそうだな」

「そうだろ? 言ってみるわ。塔南目指してみたらって」

「ちなみに弟はなんて名前?」

「和豊。皆上和豊」

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