1-6
一年ボウズのクセに良い動きするじゃんか。
正直、ここにいるBチームの奴らより上手いんじゃない?
怪我明けの俺やコバ(小林)はここの連中相手だと持て余す。
そんな中で、この一年生二人はなかなか面白い。
っと、パスだ。やっべ、周り見えてなかった。
「ヤス、お前まだ怪我引きずってんのか?」
「泰英、集中しろよ。お前は来週までにAに上げないといけないんだから」
「うっす」
分かってますよ、んなこと。で、どうする。
自軍右サイドでトラップが大きくなったことで、無意味に外に開いてしまった。
でも、不幸中の幸いか。追っ手は鈍いし、視野は広い。
「へー」
あの一年、やっぱおもろいわ。
右サイドバックの俺から、左ウイング近い位置で手を上げている一年が目についた。
望月つったっけ。逆サイドの深い位置でのパスを要求してやがる。生意気な奴だ。
自然と頬が緩み、体を捻る。届けてやるよ、しくじっても、まぁ、一回くらいは大目に見てやるか。
バックスピンを掛けたボールを逆サイド前方へ。
うっし、きた。
あの先輩、ボールタッチが滑らかすぎる。あのボールタッチを見るかぎり、たぶんここに出せるだろうと手を上げて呼んでみたのは正解だった。
前方に落ちるボールをファーストタッチで、ドリブルのできる間合いに落とす。
さっきは、闇雲に左サイドを駆けたけど、そもそもドリブルは得意じゃない。そもそも、右利きだし。
だから、こう。
寄ってくるディフェンスに一度、さっきのように縦に抜ける動きを見せる。
今度は背後から、左ウイングが外を回ってオーバーラップするのが見えた。
対峙するディフェンスに体を向け、左ウイングにパスを出すフェイクを入れる。
相手の体勢が崩れる、その瞬間、いや、それよりも早く右のアウトサイドでゴール側を向く、そして。
バゴーン!
カットインからの利き足(右足)でのシュート。オレが一番得意とするプレーだ。
渾身のシュートはクロスバーに直撃、ただ、キーパーは微動だにしていなかった。
クソ、枠捉えてたら入ってたか。もうちょい低めだった。
「ナーイス」
「うるせえよ」
近くを通った瀬野が茶化すように、こちらを見て笑い親指を立ててきた。
どうやら、今日はダメな日なようだ。
「ナイシュー」
「すんません」
パスを出してくれた、右サイドバックの先輩が拍手してくれている。
それに、頭を下げて応えた。
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