第3話 接触
アヤさんがゴミを捨てにいってからだいぶ時間が経った。そろそろ昼の時間だろうか。部屋から溢れる陰も盛んに動いている。大学の準備でもしているのだろうか。
昼になればアヤさんもきっと大学に向かうだろう。そうすれば、やっと僕はアヤさんに触れることができるかもしれない。僕がアヤさんに踏まれるかもしれない。ついに、僕はアヤさんとくっつくのだ。中敷になれて、僕は幸運だ。アヤさんの近くにいるだけで、ここまで幸せに溢れるなんて、中敷人生も悪くないもんだと、突然の運命になんの疑問も抱かずに、ただただ
アヤさんの足音が聞こえてきた。そしてすぐにアヤさんが玄関にやってきた。アヤさんは、僕の入っている靴に、まるで前々から決めていたかのように、なんの迷いもなく足を入れた。アヤさんはデニムのミニスカートを履いていた。そのミニスカートは僕が一番好きなアヤさんの洋服だった。アヤさんの足で視界が塞がれるまで僕は、そのアヤさんの美しすぎる脚と、血のように鮮やかな赤い下着を目に焼き付けようと必死だった。そしてアヤさんの足が靴にすっぽりと入った。僕はアヤさんに踏まれている格好になった。視界は黒く覆われ、何も見えなくなった。アヤさんの靴下からはかすかに洗剤の優しい香りがした。
僕はアヤさんの半分の体重を体全体で受けた。僕の体はどうやら彼女の足をしっかりと受け入れるような作りになっているようで、その重さはなかなかのものであった。女性に重いなんていうのは失礼だと感じながら、僕はアヤさんの足を支えた。
その後、おそらく5分くらいかけてアヤさんは大学についた。こんなに近くに住んでいるとは知らなかった。大学についたことを察せたのは、彼女がやたらいろいろな人に挨拶をしているからである。アヤさんは友達が多いのだろうとはたから見ていても感じていたが、こう大学の構内を歩いているだけで、何人もの学生と挨拶を交わしていた。時に声を出さずに軽い会釈をしているような動きもあった。僕以外にもこのような関係の人はいるらしい。
アヤさんに踏まれ続けてたぶん10分は経っただろうか、やっと椅子に座った。10分だけでもなかなかの痛みだった。しかし一方で、耐えられない痛みではなかった。それは僕の体の構造ゆえか、もしくは、アヤさんへの気持ちが強いゆえか、それは定かではなかったが、僕は少し蒸れたアヤさんの靴下を全力で嗅いでいた。
僕のこの体には五感が備わっているようだ。アヤさんに踏まれていると、アヤさんの優しい香りと、少しだけ鼻を突く匂いとが僕に嗅覚の存在を教えてくれる。また、アヤさんの滑らかな足の形と、靴下の優しい繊維とが僕の体に見事にフィットする。そして、僕はアヤさんの足の裏を舐め続けていた。息が苦しくなるくらい舐め続けた。きっと、アヤさんには舐められているという感覚はないのだろうが、僕はその少しだけ酸っぱいようなアヤさんの足の裏を確かに舐めていた。
アヤさんが隣に座っている女の子と話していた。その子はおそらく、フランス語のクラスも同じ、マコさんだろう。この二人は同じグループにいて、よく一緒にいた。ツイッターでもマコさんとよくリプライを送り合っている様子を見た。
「マコ痩せた?」
「え、痩せてない(笑) てかアヤこそ痩せたんじゃない?」
「私は痩せた(笑)」
「えーなにそれーーー」
「悪いー?」
「おっぱいもやせちまえよー」
「私そういうキャラじゃないから!」
見るからに
そんなことを思いながら、また、アヤさんとマコさんがたわいの無い会話をしていると、授業が始まった。スピーカーから流れる初老の女性の声が聞こえてきた。きっと、西洋史の授業だろう。日本史を選択していた僕には、さっぱりわからない内容だった。
30分くらい経っただろうか、僕がふとオナニーをしていると、彼女が僕の靴から足を引き抜いた。きっと、アヤさんも授業に退屈して、疲れてきたのであろう。突然明るい光が靴底に差して、僕は思わず目を瞑ったが、徐々に光に慣れ始めて、上を見上げると、そこにはアヤさんの脚や胸の膨らみがあった。相変わらずアヤさんの左脚は曲げられて、右足の下に置かれていた。曲げられた左脚の、太ももの肉が少しだけ膨れ上がり、デニムのミニスカートにめり込んでいる。どうあがいても届かないその脚をずっと眺めていたい気分だった。
そして右の方を見てみると、そこにはマコさんの脚もあった。マコさんはアヤさんよりは身長は低いが、それでも女性の中では高い方であった。マコさんもこの日はデニムのホットパンツを履いているようで、その見事な脚が僕の前にそびえ立っていた。僕はこの二人に踏まれていることを妄想しながら、自慰行為を繰り返した。
3回ほど絶頂に達した頃、アヤさんは自分の足を靴に戻した。視界が塞がれ、また何も見えなくなった。アヤさんの足が少し冷えていた。その冷たさと、足の奥から染み出してくるような温かさとの両方に抱かれながら、僕はまた彼女の足に嗅ぎ付いた。
そういえば、昼を過ぎたはずなのに、僕のお腹は一向に減らなかった。
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