第4話 《後半・クエスト開始!》
ゲーマーにとって、クエストとは…絶対にクリアが求められるモノである。
俺もその信念をもっている。
だから、これも、クリアが求められている。
母さんから聞いた店は、何度か同じ目的で訪れたお店で、レディースデーなるものも存在しているらしい話だ。
現在…俺は、着せられた?服を着て…美涼を待っている。
のだが…
遅いなぁ……ここで、待ってなさいって言われたんだけどなぁ。
「へーい、その彼女!いま…誰待ち?」
へ?
なんだ、この人…全く知らないんだけど。
しかもかなりチャラい。そんな男の人が、声を掛けてきた。
「あれ?…無視するの?」
「……。…あ」
貴方多分死にますよ、と言おうとしたが、怖くて声が出ない。
何か、黒い気を感じて、男の後方を覗く他出来ない。
美涼だ。
なんでだろ、怒ってる?
何か、黒いモヤが見えるんだけど…
「……あ、の…」
「どうしたの?つか君、声も可愛いね!」
「ふぇ、?! いや…あの、後、ろ……」
いや、男の声でしょ!
地声で言ったよ?俺。
ギリギリ伝わったのか、後ろを振り返る男の人。
ただ…少し遅かったみたいだ。
思わず目をそらす。
男が振り返った瞬間、顔面へ
ズゴンッ!!
強烈な右ストレートが入った。
ぶち込まれた男の人は余程強かったのか…たまらず、ノックダウン。
ぶち込んだ本人は
「あっ…いけない!首手刀で、意識だけ狩ろうって思ってたのに……」
待って、その単語は普通の女子高生からは出てこないよ。
それに手が握られてたよ、打った時。
そして、しれっとした感じで…
「あっ、美琴。…待った?」
言葉が喉を通らず、仕方なく首を横に振って返した。
知らず知らずに、恐怖してたみたいだ。
かつて、女にとってバイキングは戦争よと豪語した者がいた。
それは甘い物が好きな女子は多いからという言われがあるからだ。
今、俺の横には違った意味で"戦争" と呼ばれそうな女が居る。
がっちりと腕を組まれており、逃げることは出来ない様子。
傍から見れば、可愛い女の子が2人並んで歩いているだけ、なのだろうが……
「美涼…そんなに密着されると、そのぉ……」
「ダメよ、真琴ちゃん。あんた可愛いんだから…私がついてなきゃすぐにナンパされちゃうから。」
とほほ…俺って、男として見られてないのかな?
かつてない表情だったと思うが、無事に目的他のお店までたどり着いてしまった。
相変わらずすごい行列だ。
移動の間、集合の際みたいな変な人は来なかった。
目的のお店は『
「真琴…父さん……ここのチーズケーキが食べたかったのよね?」
「うん。実は…僕と美涼とママの3人で食べちゃったみたいで……」
今回狙っているスイーツは女性限定販売で、3人で食べてしまう前に頼まれていたものだったのだ。もちろん、僕が女装して買いに行ったんだけどな。
「それってさ…もしかして、私が家にお邪魔したせいなんじゃない?」
「それは無いと…ないよ。ママが天然なのは知ってるでしょ?」
普通に返答したはずなのに、気付いたら美涼が止まっていた。
「ど、どうしたの…?」
「真琴…言葉遣いが……」
「……あ」
いつの間にか、言葉遣いが女の子みたいになっていたってこと?
無いだろぉ…それは。
伊達に何年男として生きてると思ってるんだよ。こうしてる間も列は進む。
「真琴、正直に言って。何年くらいしてるの?それ」
「んー…どうだろう。ママに着せられるようになったのが……5年前?」
「それ…引きこもり、関係ないじゃん」
考えてみればそうだ。
あまり深く考えられなかったんだよなぁ、あの時は多分。気付いたら後の祭りみたいだった訳だし。
お、次が俺らの番だな。
『いらっしゃいませ!何になさいますか?』
「えと、1番人気のロイヤルチーズケーキ3つと…小豆と抹茶のふわふわ仕立てロールケーキ3つで!」
最後に、笑顔を足しておく。
『かしこまりました。保冷剤はおつけしますか?』
「いえ、大丈夫ですよ。すぐそこなので。」
『失礼しました。全部で……円になります。』
「…真琴。ちょっといい?」
「ん?どうかしたの…?」
なにかしたんだろうかと思っていたら、おもむろに財布を取り出すと美涼は
「店員さん、これで。」
何か黒いカードを店員さんに手渡した。
『か、かしこまりました…』
「あ、すみません。ポイントカードもお願いします。」
『はい、大丈夫です!あ、ポイント溜まってますね?お使いになりますか?』
完全に萎縮してるんですが。まぁ、このお店でブラックカードなんて普通見ないもんな。
ここショッピングモールの中の一角だし。
ポイントって、何が出来るんだろう。
一応聞いてみるか。
「今日はやめておきます。一応何に使えるかだけ聞いても大丈夫です?」
『当店では、オリジナルスイーツとの交換や代金引換などにご利用できます。お客様は現在200ポイントお持ちなのですが……とりあえずお品物です。』
「失効期日がなければ大丈夫ですよ。それでは、また…」
『いつもご利用ありがとうございます!またお越しくださいませ!!』
こうして、クエストは終了したのだ。
ただ…一点を除いて。
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