第2章 椎名家
第4話 《前半・真琴の家族》
椎名 真琴は、実は家族の中では常識人だ。
確かに、女装して楽しくなったりはしているけれど。
昨日はそのことを美涼と、透にばれてしまった。
じりりりり…
置時計のアラームがなった。
すぐに起き上がらず、ベッドでごろごろする。
「……んー」
猫のように体を伸ばして、そのままベッドの棚に置いてあるスマホを取る。
新着メッセージとだけ表記されている。
俺は内容を開いてから見たい派だ。
「んーと、あっ、透からだな。……はぁ?!」
昨日リトビアへ留学が決まった、だと?
いや、頭良いとは分かってたけど。
留学って
…だだだだだだだ……
階段をものすごい速さで誰かが上って来ている。
誰なのかは見当がつく。
それは、もちろん
「真琴ーーーー!今、悲鳴に似た何かを聞いたから、急いできたわよ?」
美涼、ではなく、母さんだ。
「大丈夫だよ、母さ…んっ!?」
なんとも言い難いが、母さんは全裸だった。
豊満とはいえない少しのふくらみが見えてしまっている。
ただ、立たないのは、見慣れているからだろう。
最近、母さんは長かった髪を腰くらいからミディアムくらいまでに変えた。
そのせいであそこの小さな突起が見えたりするんだ、まぁ俺はきょ……聞かなかったことにしてくれ。
「母さん。せめて何かは来てからきたほうが良いよ…もし強盗が来てたらどうするんだよ」
「そりゃ、こうするわ!」
「…痛ぁっい!!ギブ、ギブ、」
ミシッ…
今の音は、母さんが僕を払い倒し、四方固めをしたから、だ。
母さん、椎名 愛璃は柔道3段・空手4段・合気道2段の持ち主。
裸で息子の部屋に来る時点で可笑しいけど、もっとやばい。
朝から何故か寝技を決められた。
あの後、母さんが部屋を出ていって、俺も続いて一階に下りた。
すでに朝食は用意されていたのに、母さんに再び捕まり抱えられて、そのまま風呂場に連行。
そして服を脱がされ、浴室に投げ込まれた。
シャワーを浴び、朝の洗顔をして、浴室を出る。
脱衣所には服一式が置かれており、それを着る。
リビングへ戻って、決まっている席で朝食を食べ始める。
「あらー、今日もかわいいわよ。悩んで買ってきただけの収穫はあるわ。」
…今、俺が着ているのは、完全に女性モノだ。
大抵は、何事も許してくれている両親で、世間から見れば"優しすぎる親御さん"なんだけど、本当は違う。
ただ、どこか抜けているだけだ。
「真琴、今日は…おつかい頼むわよ。………………隣町のデパートまで行って、お父さんの為に"ブリトニーチーズケーキ・やば盛りいちご"を買って来てちょうだい!!」
「はーい」
何も言わずに、引き受けるしかない。
俺には…もうそれしかないんだ。
「あっ、今日は…美涼ちゃんも一緒に行きたいって言ってたからオッケイしておいたわよ。」
……え?
こういっちゃ、なんだけど…いつもより、、大変な気がしてきたぞ?
「ほら、食べたら、行った行った。」
しっ…しっ…、って。
はぁ……腹を括って、もぅままよ!!
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