第1章 河上家
第2話 《前半・河上家の話》
コーヒーメーカーから2つのコップにコーヒーが注がれ、俺と親父の前に置かれた。
親父はそれを1口飲んで落ち着くと、
「昔の昔、平安後期だそうだ。その年生まれた子供は7人、そのうち女子は0人。普通に考えれば嬉しいことだろ?跡取り候補が多いんだから。ただ…」
「…まさか」
「俺も分からないでは無いんだがな、とある馬鹿が近くの祠にこう願っちまった。俺は娘が欲しかった、と。祠に祀られてたのが神様なら良かったんだろうが、そこに祀られてたのは化け物だった。祀られてるというよりは閉じ込められたって感じだろうな。」
「それで?」
「願った翌日、その馬鹿の息子は女の子になってたそうだ。だが、化物は交換の条件があった。願いはただ1つ、解放する事。馬鹿はそれに乗って、祠を壊した。これにて交換は終えた、そう思ったんだろうな。だが…」
「その後、思わぬ事が2つ起きた。1つは、その化物は馬鹿を殺して成り代わり河上家の1部となったこと。もう1つは、その後河上家ではある時期の子供に限り突然変異的に性別が変わる子が現れた。そして…今年もその時期だというんだ。」
「それが本当だとして、こうして留学的なのに行こうとしてるの?」
「実はな…遥。ある時期ってのがお前の年齢でな、いとこやはとこにはもう居ないんだ。」
「は?」
「もうお前の年齢を無事に超えた息子と娘しか居なくてな、限りなくお前が今年の発現者になっちまったんだ……」
俺も俺の家族も、年末やお盆は必ず実家に帰る。本家と呼ばれるそこには2000坪もある広大すぎる土地と大きな屋敷があり、ほぼ全ての血縁者が勢ぞろいする。もちろん、従兄弟やはとこ、そのまた親戚にも会う。
俺が今17だから...って、だからあいつはあの時あんなに切り詰めてたのか。そういや、あいつ五月三日が誕生日だって言ってたからな…
「って事は、今回の留学が親父の都合ってことではなくて…俺の都合?」
「…そうなるかな」
「で、服とかを先に送ったのは?」
「もちろん、、嘘だ。」
ゴンッと音を立てて、机に頭が落ちた。
服買ったよ?しかも、今日に。完璧な無駄金だよ?
なんか話そうとしても、溜息しか出ていかないや。
「親父…」
「…なんだ?」
「そういや、どこに向かうんだっけ?俺達」
「レバノンだ。もう遅いから、寝た方がいい。」
「はいはい……」
こうして、留学という名の隠蔽工作だと知った俺は書斎から自分の寝室に戻り、ベットに倒れ込んだのだった。
そのまま意識は遠のいて…翌朝になるまで決して、目は覚まさなかった。
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