9話 そんな、彼我戦力差3:4

【円形競技場にて】(さーしゃ)←語り



今、わたしに出来る事は、目の前の試合に勝つ事。

それだけ・・・

勝つためには手段を選んでいる場合じゃない。


思惟ちゃんは、わたしが躓いた時には、いつも手を差し出してくれた。

誰よりも親身になってくれた。


強さと優しさを備えたわたしの親友。

思惟ちゃんが望むなら、抱かれても良い。

わたしの大好きな思惟ちゃん。

だから思惟ちゃんを守る為なら、世間からどんな非難を受けようと、わたしは悪になる覚悟がある。


わたしは、鞭を強く握った。

乗馬用の鞭だが、これで馬を叩いた事はない。


レフリーは、課金で持ってこさせたお紅茶とミルフィーユを食べてる最中だ。

反則負けの心配はない。


凶器を使うなど、わたしの良心が傷まない事はない。

でもそんな事も言ってられない。


スク水シーサーと月の輪いんふぇるのとの、実力差は誰の目から見ても明らか。


彼我戦力差3:4と、まだ数で勝ってる内に、倒してしまわなければならない。


わたしは、大好きな思惟ちゃんを守る為に、悪になる覚悟がある。

わたしは、鞭を手にリングに戻った。


バシン!


鞭は良い音を響かせた。


・・・が、彼我戦力差3:4。

そう・・・彼我戦力差3:4。


憤怒しリリン      VS 思惟ちゃん

憤怒しロゴス      VS 課金で来た助っ人力士?

寝返った葛城留美    VS 課金で来た助っ人忍者?

           


それぞれ熱戦中だ。

ものすごーく熱戦中だ。


・・・入りずらい。 


子どもの頃、遊んでいる子ども達の輪の中に、「わたしも入れて」と言えなかったわたし。思惟ちゃんがいないと、何も出来なかったわたし。


わたしは再び、鞭でリングを叩いてみた。


バシン!


良い音はした。 


何人かの観客が、そんなわたしを見ている視線を感じた。

きっと可哀想な子を見る目だ。


嫌な汗が流れた。


そんな、彼我戦力差3:4・・・



つづく

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