8話 姫君達の狂瀾祭ヾ(@°▽°@)ノ

恋や愛が無ければ、わたしの世界は存在しない。

恋や愛に満ちたわたしの世界を維持するために、

わたしは恋し愛を語り、そして戦う。

それがわたしの物語だから。


憤怒しリリンのプロフより抜粋




【円形競技場にて】憤怒しリリン←語り


スク水シーサーのしーは、青コーナーに立った。


プロフによると高校生らしいが、その身体は中学生のように、まだ出来上がってなかった。

しかし、人が最もしなやかな動きが出来るのが、中学生くらいだと言われる。

それを知ってか彼女は、そのしなやかさを最大限に活かしていると言って良い。


それを強さとして表現できるのは、天性の才能があるのだろう。

そのしなやかな身体のしいに向かって、わたしは問いかけた。


「世の中には、2種類の人間しかいない!

わたしに恋する者と、わたしを愛する者!

あなたはどちらかしら?」


「お前の頭・・・お花畑すぎるわ!」


と、まだ無理に強がってる感がある少女は叫んだ。

シーサーの覆面をしているので、美少女なのかは確認できないが、まあ調った顔立ちなのは何となくわかる。


「さあ、飛び込んでおいで、わたしに恋する者よ!

わたしには、その想いを全身全霊で、受け止めてる義務がある」


わたしは、わたしに恋して止まないスク水シーサーの少女に告げた。



―辺境伯杯タッグマッチ・姫君達の狂瀾祭―



客席に女子しかいない競技場は、女子の香りが充満していた。

そんなリング上で、スク水シーサーのしーが、ムササビの様に飛んだ。


フライング・ボディーアタック!


そのしなやかな動きに、観客席から黄色い声援が飛んだ。

初出場にも関わらず、スク水シーサーは、もう観客の心を掴んだらしい。


フライング・ボディーアタックの、予想以上の完成度の前に、わたしは、しーの身体を受け止められず、倒れこんだ。


「何てことなの!

わたしに恋する者の想いを、受け止められないなんて!」


「だから恋なんてしてないです!」


さらに少女は、私にニードロップを浴びせた。


「この衝撃は、まさか愛・・・そうわたしへの愛?

恋が愛へと覚醒してしまったと言うの?

そして、あなたのわたしを愛する気持ちが強すぎて、支えきれなかったって事?」


「違います!」


少女は、立ち上がったわたしの頭部へ、ハイキックを浴びせた。


こんな小娘の攻撃を避けきれないとは!

その直撃を受けたわたしは、よろめきながらも、顔を赤らめた。


しなやかな身体を持つ年下の小娘に、痛めつけられる屈辱。

わたしの身体が、熱を帯びた。


それが痛みつけられた怒りに拠るものなのか、恋や愛の類いなのかは解らなかった。

いや多分、両方だろう。


愛と憎しみ。愛ゆえの憎しみと言うべきか。


少女は、私をヘッドロックで固めた。

わたしを、抱きしめたくてしょうがなかったのだろう。


頬が、少女のお腹に強く押し付けられた。

今にも涙が零れてしまいそうなくらい、少女の身体は優しくいい香りがした。

芯から優しい娘なのだろう。


少女に抱きしめられ(正確には締め上げられ)わたしの心臓は高鳴った。


わたしの表情は、活き活きと輝き始め、そして恍惚の表情を浮かべた。


「これが・・・愛と憎しみを越えた愛なのか」

「違う!絶対に違う!」

と少女が、訂正を入れが、わたしは叫ばずにはいられなかった。


「わたしもお前を憎み、そして愛している!!!!!」

と。


「いや、そう言うのはちょっと・・・ホントに止めてください」

スク水シーサーの少女は、冷めた声で言った。



つづく





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