11話 百合咲く所に、琵琶の音あり。


美しくそして柔らかな憤怒しリリンが唱える

『整合性のある美しい世界』の探求が

わたしたち「月の輪いんふぇるの」の目的と言っても過言ではない。

それは戦いの中に存在する。わたしはそう信じている。


by 憤怒しロゴス




【円形競技場にて】(憤怒しロゴス)



あの子が言っていたように、タッグの相方憤怒しリリンが、尻丸出しなのに、わたしがパンツを履いているのは、チームとして整合性が無い。


だからって、わたしが恥じらいを捨ててまで、リリンに合わせる必要はある?

リリンが尻を出したのは、

「男子の力士が出してるのに、わたしが出さないのはオカシイ。

そこに『整合性のある美しさは存在しない』

わたしはすべてにおいて、美しくありたい。」

だった。


さらに、

「あなたが恥ずかしいなら、無理強いする気はない。

パンツを履いたあなたを見た時、思ったの。

わたしがわたしであるなら、あなたはあなたであるべき。

そうすれば、タッグチームとしての整合性が、自然と芽生えてくる。

わたしの中のあなたも、あなたの中のわたしも、わたしは大好き。そんな大好きの行き先には、『整合性のある美しい世界』があるとわたしは信じてる」



「整合性のある美しい世界って何?」

わたしの問いにリリンは、

「整合性のある美しい世界って・・・」

そう呟くと、空を見つめた後言葉を続けた

「それを知る為には・・・とりあえず・・」

「とりあえず?」

「浣腸してもいい?あくまで医療行為としてなんだからね!」

「・・・」


リリンは基本ど変態・・・大体、健康なわたしに医療行為が必要なの?


「調教とかそういうんじゃなくて・・・うん。解って!」

「解らない」

「えー!私は、ロゴスの全てを受け入れたい、ただそれだけなの!」


話にならない・・・とりあえず、話を現在に戻す。



スク水シーサーの助っ人格闘家の1人、力士のマスクをつけた力士?は、わたしの褌を掴み寄せてきた。がっちりと掴み安定感のある良い寄りだ。


しかし、廻しと違って、褌をそんなに掴まれると、ちぎれそうで不安なのだが。

まあ下にパンツ履いてるから大丈夫か?


「雨(あま)の巫女関ですよね!」

力士のマスクをつけた力士が、わたしの耳元で囁いた。


雨(あま)の巫女関・・・わたしの四股名だ。

そして、この声、この匂い、この赤ちゃんの様な潤いお肌・・・まさか!


女子相撲界注目のルーキー、現役の女子高生!

琵琶の音(びわのね)関!


百合の噂が有り、守備範囲は幼女から老女まで、百合咲く所に、琵琶の音あり。

百合関連トラブルの中心には、必ず、琵琶の音関がいると噂されていた。

それは、まさに百合台風!


「雨(あま)の巫女関、あたし、雨の(あま)巫女関に、会いたくて、会いたくて、ネットで求人見て来ちゃいました」


そう、この後先考えない押しの強さが、琵琶の音関の相撲だ。

琵琶の音関の、唇が近づいてくる。


ノーメイクで、まだ少女ぽい初々しい口元。


「ちゃっとまって琵琶の音関・・・

あのね、あのね。

相撲規約でそう言う事は禁止されてるでしょう」


「ここはリング、土俵じゃんないんです、巫女関!」


注目のルーキーなだけあって、寄りは堅硬だった。


「雨(あま)の巫女関・・・

あたしが『整合性のある美しい世界』の事教えてあげる」

とわたしの耳元で囁いた。


今、わたしがもっとも知りたいことを・・・


押しだけでは落とせないと感じたのか、作戦を変えてきた。

作戦の素早い変更、そして実行。

まさに琵琶の音関の相撲だ。


しかし・・・この子の目的は何なの?


『整合性のある美しい世界』

その言葉を、リリンの口から聞く者はそう多くないはず。


「まさか!リリンと?」

「そう・・・あたし、永久(とわ)の夢関に、

『整合性のある美しい世界』の事、手取り足取り教えてもらいました。

あま~い、ひと時でした♪」


永久(とわ)の夢関とは、憤怒しリリンの四股名。


リリンめ!

わたしと言う女がいながら!

こんな若い女と!


・・・と、百合の気が無いわたしが嫉妬するわけもなく。


「ごめん、わたしとリリンは身体だけの関係なの」

と、わたしの言葉に、


「えっ!?」

と驚き、ちょっとだけ嫉妬の色を見せた琵琶の音関の、隙をつき、リングに浴びせ倒した。


勝った・・・

若い女に勝った・・・


「若いだけが取り柄の女が!」


って、違う違う・・・


わたしは、倒れこむ琵琶の音関を見て、一息ついた。

いや、一息ついてしまった。


相撲なら、静かに勝ちを確認する場面だろう。

身体に染みついた癖だ。


「覚悟、ロゴス!」

視界の外から何かが飛んできたのは解った。

美少女が2人、私に向かって飛んでくる?


【しー】と【さー】のダブルドロップキック?


予想以上に高い位置からの、ダブルドロップキックに、不意を突かれ、わたしの意識は飛んだ。



つづく



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