3話 逆転の鍵 o(^-^)o

【円形競技場にて】(思惟)


覆面を守ろうとするわたしの頭に、憤怒しリリンの掌底が次から次へと叩き込まれた。


「やめて・・・やめてください」

と嘆願したところで、ここはリング上、止めてくれるはずはない。

目から涙が零れ落ちるのを、止めることが出来なかった。


控えめに生きてきたのに、なぜ

こんなところにいるんだろう?

進学校に通う普通の女子高生だったのに・・・

と自問自答したところで、

自分の浅はかさが原因だと言う事は解っていた。


衝動的に・・・

軽い気持ちでこんな所に来てしまった。

自分の浅はかな行動を、今、殴られながら悔いた。


リングサイドに、私よりずっと控えめな、タッグマッチの相方、そして、無二の親友の里紗(さーしゃ)が、見えた。


シーサーの覆面にスクール水着。


紺色の水着に、ほとんど日に焼けてない白く透明な肌が冴える。

その透明感が、私に罪悪感を感じさせた。


わたしが巻き込まなければ、彼女は普通の日常を過ごしていたはずだ。


その里紗(さーしゃ)ちゃんが・・・


ん?

あれ?

スマホいじってる?


わたし、ボッコボコにやられてるのに・・・


ん?!えっ?!


まさか、わたしの無二の親友は、親友のわたしが・・いや里紗(さーしゃ)自身も、退学の危機に瀕しているのに、リングサイドでスマホをいじっている。


「えーーーーーー」


わたしは目を疑った。

タッグの相方のわたしが意識が朦朧としているのに、

リングサイドでスマホ?!


「里紗(さーしゃ)・・・ちゃん」

わたしの叫び声に、里紗(さーしゃ)が、冷静に


「ちょっと待っててね。今、課金してるところだから」

「課金って・・・ネットゲーム中?試合中だよね!」

「えっ?シーは課金とか嫌な方?無課金派?」

「わたしは無課金派・・・って違う!そんな場合じゃ!」

「無課金派か、シーらしいね。

無課金でしようとする姿は立派だと思うよ。

でもね、ゲーム内のルール上、課金はなんの問題もないんだよ」


「今は、課金問題を話してる場合じゃなくてね」

「迷うよね。無課金を貫いている人がいるのに、課金で一気に進めちゃうなんて、

金に物を言わせてるみたいで、わたしは気が引けるよ」


「いや、いや、いや、今の状況を見て!」

わたしの絶叫に里沙(さーしゃ)は、攻撃されてる私を見た。

「うん♪」


里沙(さーしゃ)は可愛く頷いた。その可愛らしさに、つい微笑みそうに・・・


*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆


・・・なったが、激しい掌底が頭部に叩き込まれて、現実に戻った。


「うん♪じゃなくてさ!」

「わたしは決めたよ。じゃあ課金するね、ポチッ」


里紗(さーしゃ)は、にっこりと微笑み、課金した。

するとリングサイドに、ラウンドガールがうどんを持って来た。


「うどんお持ちしました」

「おう!サンキュウ」


男前な女のレフリィーはそう言うと、リング上でうどんを食べ始めた。

何が起こっているのか解らない観客達は、リング上を凝視していた。


そこへ突然登場した女子ボクサーが、リングに上がり、

憤怒しリリンの顎にアッパーカットを打ち込んだ。


「え?!」


憤怒しリリンはふらつき、憤怒しリリンの相方・憤怒しロゴスは叫んだ!


「おいレフリィー、部外者をリングに上げるなよ!」

「ワシが今、うどんを食べてるところでしょうが!」

「うどん食ってる場合か!仕事しろ!」


突然、憤怒しリリンが、女子ボクサーに、アッパーカットの直撃を食らった結果、

わたしは解放され、里紗(さーしゃ)の居るリングサイドに逃げ込んだ。


「何?何が起こってんの?」

「課金だよ。ほらここのサイト・・・まさかとは思ったけど・・・」


そのサイトには、課金メニューが載っていた。



━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─


辺境伯杯女子タッグマッチ課金メニュー



・レフリーにうどん出前。     


レフリーがうどんを食べてる時は、反則し放題


            500コイン



・女子ボクサーの乱入お助け。


           1500コイン


※女子ボクサー乱入は反則になるため、


レフリーの気をそらせるアイテムを同時にお使いください。



━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─



「どこに逆転の鍵が隠されてるか解らないよね

この状況から言って、このサイトを知ってるのは私たちだけだよ。

ここの運営も面白いことするね」


里紗(さーしゃ)は、にっこりと言った。




つづく


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