第2話 プロローグ的な何か。パート2
「キューブ様!よくご無事で、あの、エルは、エルは何処に?」
歓喜と痛ましさを混ぜ合わせたような顔を向けシャルロットは駆け寄ってくる。
「……」
目をそっと閉じるキューブ。
「そ、そんな。ああ、エル、エルゥー、あーぁぁ」
無言を最悪と捉えたシャルロットは泣き崩れる。
そんなシャルロットを見て若干、罪悪感ぽいものを抱きつつキューブは話を進める。
「シャルロットさん。聞いて下さい。私は外来者。故に、この世界の歴史に深くは干渉出来ないんです。申し訳ない。ですが、貴女さえ良ければ、エルさんの基盤を貴女の赤子に込めることができます。如何なさいますか?」
「どういう……事ですの?」
泣き腫らした目で見上げ問うシャルロットに、「エルさんの特性因子を貴女に移植する事によって、擬似的ですが、エルさんとのお子さんを授かる事が出来るという話です」
「……エルと私の子供」
「はい。ただ……シャルロットさんとエルさんは婚約はされてましたが、結婚はされてなかったのでしょう。子供が産まれたら周りの目は厳しいでしょうね。未婚の母親に成るわけですから。……それでも構わないのでしたら、私は貴女の願い通りに事を勧めますが、如何されますか?シャルロットさん」
「私は、私は」
一瞬躊躇いつつもシャルロットは意を決死て「お願いします。私に、いえ!私達の子供を授けて下さい!キューブ様!」
「かしこまりました。では、しばらくお休みなさい。シャルロットさん」
キューブが手をシャルロットの前に差し出すとシャルロットは眠りに誘われた。
数ヵ月後―
シャルロットは医師に懐妊の診断を受け、それを聞いた両親は娘の将来を憂いて堕ろすことを勧めたが、シャルロットは頑なにそれを拒否した。両親も英雄であり拳聖の忘れ形見とのこと、強くは言えず、最終的に折れる形でシャルロットの願いを叶えることとなる。
レイスティンガー王国歴2502年。秋。
エルネスティ・ラングレン。
後に歴史に名を馳せる事になる一人の少女がこの世に生を受け、生まれ落ちた。
―――
「おぎゃー!おぎゃー!」
「シャルロットお嬢様、元気な女の子ですよ」
「ああ!良く頑張ったわね。シャル。ほら、かわいい孫娘よ。貴方」
「おお、お前に良く似たかわいい子じゃないか。良くやった、シャル」
「お父様、お母様、ありがとうございます。我が儘聞いてくれて」
「なんのなんの」
「ふふ、貴方ったら、もうお爺さんの顔になっているわよ」
「ふふふ」
「この子、エルの髪と一緒で青銀色のキレイな髪。大きくなったらきっとモテモテね」
「ふむ。しかし娘か。婿養子を取らんとならんな」
「もう、貴方ったら、まだ生まればかりよ。でもそうね。貴女が結婚しないと家の系図はこの子だけだものね。まあ、それは追々よね」
「もう、お母様まで。………ごめんなさい。お父様、お母様。私きっと、もうエル意外は恋に落ちないわ。だから、この子をきちんと淑女として育て上げる。だから、お願い。お父様、お母様、私の我が儘の続き。最初で最後の。この子の幸せ。一緒に、お願い」
「シャル」
「………」
暫しの沈黙の後、執事が声をかける。
「旦那様、奥様、お嬢様の身体に障ります。もうそろそろ」
「ああ、そうだな。シャルゆっくり休みなさい」
「きちんと養生するのですよ。シャル。後は任せるわね。ケイト」
「はい。奥様」
「ありがとうございます。お父様、お母様」
こうして、エルネスティはゴリゴリの淑女となるべくレールを走り出すことになる。
次回
エルネスティ。大地に立つ。
ご期待下さい。
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