【3 開かずの間の秘密】

プロローグ

 りりり りん

 ワタシを、イラつかせる音。

 ワタシが動くたびに、騒がしく鳴る。

 最近は、背中に変な重みも感じるようになった。

 何かにたたられてでもいるのかしら?

 

 りりり りん

 炎天下の中、照り返しのきつい横断歩道を渡って目的地へ向かう。

 公園の日陰で横になって、しばらく休んでいたい気もするけど……。

 でも、まあいいわ。

 あそこは、ワタシにとって最高に心地良い場所だから……。

 

 りりり りん

 やっとくぐれるほどの、狭い入口を通る。

 でも、その先の空間はまさにパラダイス。

 ほど良く効いたエアコン。冷たい飲み物。おいしい食事。

 ワタシは、いつもの場所に座ってくつろいだ。

 

 しばらくして――。

 誰か近づいて来る! そう思った、瞬間だった。

 急に、背中が軽くなった気がした。

 まるで天使にでもなったみたいだ。

 大空を舞える翼が背中に生えたのね――ワタシは、そう確信した。

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