第1話


ーみやび、13歳。ー


憧れの先輩がいた。

ふたつ年上のウエダ キョウマ センパイ。


ただの一目惚れ。カノジョになりたい。とかなんて、そんなだいそれた事…3%ぐらいしか思っていない。


一瞬でも、いい。たったの1秒…ううん。コンマ0,2秒でもいい。

砂のカケラ程でいいから目が合わないかなって、見つめ続けた初恋。


ドキドキ鳴る鼓動のリズムが楽しい。

ズキズキ裂く胸の痛みが苦しい。


ただ視線の先に辿り着く目的地に、キョウマセンパイがいます様にと、祈りながら眠りにつく毎日でアタシは覚えてしまった。


人には言えない…コトを。


ーーその夜も、布団に潜り込んでからキョウマセンパイの事を考えていた。


センパイ、センパイ、センパイ…!


大好き。触れたい。触れられたい。もしも、もしも、だよ?

恋人、なんて事になったらね?手を繋ぐ、でしょ?

見つめ合う時間なんて、秒単位なんて言わず贅沢に分単位!何分も、何十分も見つめあい続けたら、とりあえずキス?チューしちゃうの?センパイと。

チューっていつ、目を閉じるの?


アタシは、近くにあったぬいぐるみを抱き寄せて、そっと口づけると興奮度が加速していった。


チューした後は…もう、サイゴまでよね!


サイゴって、つまり……ックス


キャッーーー!!!


足をバタつかせて、心の中で叫ぶ。  


いや!そんな、言えない。か弱い乙女だもの。

でも、でも!

センパイの手がアタシの制服を脱がして、更に下着とかも取られて…素っ裸にされちゃうんだよ?


「見ないで」


とか、恥じらいながら言うのかな?すると、センパイは


「ダメ。見せてよ。全部。」


優しく囁くの。


どんな顔してればいいのかな?

無表情だと怖いから…半目を開けてセンパイの行為を覗き見る?何か怪しい女。

かと言って、ガン見してたら笑われそう。

笑われたらその先にいけないじゃない。って、イキタイのかアタシ!?


当然でしょ。好きあってるふたりが行き着くのは、…ックスだよ。フフ。


アタシの中の欲望が笑う。


まだ、早いわよ?

13だよ?チュー止まりでいいでしょ?


アタシの中の理性が微笑む。


アタシ自身は…好奇心真っ盛り!進みたいに決まってるじゃない!


そう…だから、きっとセンパイは、アタシを裸にして

そっと触れるわ。


こうやって…


アタシは、妄想と現実をリンクさせる。

センパイに触られることを考えながら自分の胸に手を添える。

…添える、だけじゃ終わらないよね?

も…揉まれるの?


少し指で胸をなぞる。何やってるの、アタシ…


でも、これはいつかの為の練習。

だから、この先はアタシの…

手を肌に滑らせて、ソコに触れた。


少しだけ、指でなぞる。


…センパイ…って、センパイの顔を思い出す。


誰にも見られてない布団の中で、少しづつなぞる指の速度を早めた。


おかしな気分。


センパイの事を考えているから?それもあると思う、けど。


あれ?れ?


「…っん」


思わず漏れた自分の声に気付いたけど、動く指を止めたくなかった。


もう片方の手で布団を握りしめた瞬間ーー

アタシは、自分で絶頂に達したのがわかった。


自分でジブンを、


「イカセタ?」


身体が火照ってる。それと同時に、眠気に襲われて

気付けば目覚まし時計のやかましさに目を開けた。


夕べの「アレ」は、何だったのか…なんて、考える間もなくアタシは、確信している。


アレは、だから、つまり…言葉にしては言えない。


だから、心の中にだけ留めておく。


アタシ、イッチャッタ…






ーみやび、23歳ー


「あの夜は、忘れられないよね。」


ペンを走らす手を止めて、呟いた。


「ふぁ~あ~」


夜更かしのせいでアクビが出る。起きてるせいで、お腹も空いて来た。

だけど、食べると太る事実を受け入れたくないアタシは、冷蔵庫を開けペットボトルの炭酸水をクイッと喉に流し込んだ。

ダイエットにいいのかどうかは知らないけど、炭酸水って泡でお腹が膨れてくれそう。


キュッと、ペットボトルの蓋を締めて冷蔵庫に戻してから布団に潜り込む。


「続きは、明日。おやすみ。」


電気を消して、部屋を暗闇にする。目を閉じればすぐ寝れそうだ。


ーー何故、アタシが自分の歴史を書いているのかー…


それは、たいした理由ではない。本当に、はたから聞いたら、「くだらない」と思われる事だろう。

だけど、書くからにはキッチリ全てを書き出そうと思う。


このノートに。









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ヴィギナー 結城 すい @sui_yuuki

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