第三六話:予がパンゲア王国、第18代国王・ガルタフ3世である!!

「ああ~ らめぇ、らめなのぉぉ、パンパンであふれ出しちゃったのぉぉ~。こんな激しいの覚えちゃうのぉぉ、魔力回路が魔素の味を覚えちゃうのぉぉ」

 転移は無事終了したみたいだった。

 エロリィがひっくり返って、ビクビクと痙攣している。

 当然、ダブルピースだった。アヘ顔だ。


 エロリィのピンクに染まった頬。そして。金色の長いツインテール。

 そこには、ベットリと白濁した液が付着していた。

 よく見ると、真っ白な太ももにもベットリだった。

 ヌルヌルとした白濁液まみれだった。


「あはッ! ゲロビッチのクソロリ姫が、今回はまともに跳んだようだな」

 ダブルピースのままひっくり返ったエロリィを見て、ライサが言った。

 緋色の髪が揺れる。


「パンゲア城の城内ですね」

 周囲をクルリと見るシャラート。

 クイッとメガネを持ち上げて言った。

 おっぱいも揺れる。


「確かに、城に跳んだようです。エロリィ、大したものです」

 ルサーナが優しげにエロリィを見つめて言った。


 白濁液にまみれたエロリィ-はダブルピースをしながらアヘ顔でピクピクしているだけだった。


「エ、エロリィ、なにそれ?」

 俺はひっくり返っているエロリィを見た。

 そして、訊いた。訊かずにはおれなかった。


「はぁ、はぁ~ あああん、もう魔素があふれてきちゃったのよぉぉ……」

「魔素?」

「ああ、そんなアインがジッとこっちを見ると、また魔力回路がぁぁ…… ひぐぅぅ、あ、あ、あ、あーん」

 エロリィは歯を食いしばって、痙攣を押さえている。

 喰いしばる口元から見える八重歯が可愛いが、なにが起きているのか分からん。

 エロリィは「はぁはぁ」言いながら、指で自分の頬についた白濁した液をぬぐった。

 そして、ピンクの舌を出してそれを舐めた。

「ああん、魔素はヌルヌルで苦いのよぉぉ~」

 白い喉をのけぞらせて、エロリィは言った。


『大量の魔素を体内に注ぎ込んだせいで、逆流したわね』

『あれ、魔素のなのか……』

『魔素の濃度が濃くなって、プリプリのゼリー状になったようだわ』

 サラームが俺の脳内で解説してくれた。

 白濁液まみれのエロリィは魔素の逆流が起きたためで、全然エッチな状況ではなかった。


「やっぱり、エロリィちゃんは最高だな…… あああん、アイン、アインの指使いも、手馴れてるな……」

 俺におっぱいをもまれながら、エルフの千葉が言った。

 以外にモミ心地のいいおっぱいだった。千葉のくせに。

 服ごしなのに、手のひらに吸い付くようなしっとりとした感触があった。


「しかし、ここが城? パンゲア王国の?」

 俺は周囲を見た。千葉のおっぱいからは手を離す。

 それは荘厳な石造りの構造物に囲まれた中庭のような場所だった。

 高い塔が見える。周囲は高い石造りの塀で囲まれていた。

 まるで、天に突き立った剣のように見える。

 高層ビルという物を知っている俺の眼から見ても、その存在感、迫力はこっちの方が上だった。

 アーチ型に加工された通路のようなもの。凄まじく高い技術で作られている建物だ。

 石の構造物の中にぽっかりと空いた空間といった感じの場所だ。

 下は土だったが、ところどころ、煉瓦のような物が埋め込まれている。

 石の柱には、蔦のような植物が巻きついていた。

 

「パンゲア王国の王城まで転移か…… すごいな、俺の全盛期でもこの人数で転移ができるかどうか」

 シュバインが呟いた。

 評価が急降下爆撃中の俺のオヤジ。「雷鳴の勇者」というより「衝撃降下90度」だ。

 だが、ここではさすがに精悍な表情を見せていた。

「ここ城?」

「ああ、アインは初めて…… ではないな、赤ん坊のときに何回か来たことがあるはずだが」

「覚えてないなぁ」

「まあ、本当に赤ん坊のときだからな」

 

 俺とシュバインの久しぶりの父子の会話が、唐突に遮られた。野太い絶叫だった。


「ぬおぉぉおおおお!!! なんじゃごらぁ!! 殴り込みか?! ガチホモか? 鉄砲玉かぁぁ! 生かして帰すんじゃねぇ!」

 絶叫とともに、ワラワラと完全武装の兵士たちがやって来た。

 槍やら剣やら一撃必殺の凶器を手にしている。


「オヤジの玉取りにきた、ガチホモ奴らの鉄砲玉か? 生かすな、殺せ! 切り刻んでやれ!」


 顔中傷だらけ、まるで鉄路線図のような顔をした男が、狂気の目でこっちを見ている。

 王宮を守る兵士というより、法の外側で生きている人間のように見えた。


「私です! ルサーナです! 戻ってきました。 父上に―― 王に知らせなさい!」

 銀色の髪をなびかせ、ルサーナの凛とした声が響いた。


「ルサーナ様! 本当だ! 本当に…… 帰ってきたんですね」

「帰ってきました、夫と我が子、天才で超可愛いアインも一緒です」

「おお!! 確かに!『雷鳴の勇者』シュバイン様も! これで、我々も…… 我がパンゲア王国に勝利が……」

 ピカソがデザインしたような、顔の兵士が言った。切り刻まれた顔を雑にくっつけた感じだ。

 顔面の面積の中では疵の占める割合が60%くらいありそうだった。

 そんな出来そこないの花山薫のような、男の目に涙が浮かんでいた。


「大丈夫! この『雷鳴の勇者』シュバイン・ダートリンクが来たからには、ガチ※ホモ帝国に好きにはさせん!」

 ジャージ姿の俺のオヤジが言った。無駄にいい声のセリフが響く。

 胸には「1-A 天成 宗一郎」と書いてある。


 俺たちの周囲にどんどん人が集まってきた。

 「勝った! この戦勝ったでぇ」とか「これでガチホモの奴ら殺したるわ、皆殺しじゃぁ」というような声が上がっている。

 どいつもこいつも人相が悪い。

 日本であれば暴対法の対象になるようなお方ばかりであった。


「おおお、こ、このボンが…… 姫のぉ…… ?」

 よろよろと、顔色が悪くおまけに人相も悪い男が俺の方に歩いてきた。

「そうです。私の息子、アインザム・ダートリンクです」

 ルサーナの声に、「おおッ」というどよめきが起きた。

「な、なんと、これは、不敵な面構えで…… さすが、王者と勇者の血を引く者……」

 確かに、俺は一見すると、尖がった感じの容姿だ。

 銀と黒に真っ二つに分かれた髪の毛。

 おまけに、目つきは鋭いというより「悪い」だ。

 今は自分の容姿を気に入っている。

 しかし、ニート時代の俺であれば、嫉妬半分ではあるが「チンピラごろつき」と言い放っただろう。


「王も…… 王も、ルサーナ様の帰還をお喜びになるはずです。さあ、早く! 王に、王に知らせるのだ」

 兵士の声が響く。

 そして、俺たちは謁見の間へと向かうのであった。


        ◇◇◇◇◇◇


 でかい城だった。

 俺たちが転移したのは、城内の中庭だった。

 そこから、建物に入って、階段上がって5階が謁見の間とのこと。

 石造りでびっしりと隙間なく石が積まれている。通路は魔法による炎で明かりが確保されていた。

 頑丈な要塞の内部といった感じだった。

 歩いている途中で、多くの兵士とすれちがったが、なんか殺気立っている以上に、疲れているように見えた。

 戦況はよくないんだろうと思った。


「いったい、戦はどのような状況なのだろうな」

 エルフとなった千葉が言った。

 こいつは、漫画ヲタ、アニヲタであり、そしてそれ以上に軍ヲタだ。それも純度の濃い生粋の奴だ。

 この分野ではさすがに俺もついていけない。

「あんまり、良くないんだろうな」

「まあ、そんな感じだな」

 やはり千葉も城内の空気から戦況は芳しくないと感じていたようだ。


「では、謁見の間です」

 俺たちを案内していた兵士が恭しく頭を下げた。

「ここがそう?」

「そうです」

 兵士はきっぱりと言った。


 巨大な扉の奥が謁見の間らしい。

 威圧的な作りの扉だ。王の権威や権力。

 簡単にいってしまえば、その力を示す造りだった。

 圧倒的な力を持つ王に謁見するという事実をいやおうもなく、感じさせるものだ。

 俺の母親は娘とはいえ、すでに結婚して王家から抜けている。

 本来であれば、俺には王位継承権はない。

 ただ、ガチ※ホモ王国の侵略で、王家の男がいないとかなんとか……

 王位継承権をもって、王子になるのは悪くないが、それも平和な時代ならだ。

 戦争の真っ最中に「はい、アイン君は今日から、王族です。皆さん、拍手」とか言われても困る。

 つーか、迷惑。下手すれば、死んでしまう。

 まあ、勝てばいいという思いもないではないが……


 俺と俺の両親、シュバインとルサーナ、そして許嫁チームのシャラート、ライサ、エロリィ、千葉が並んでいる。


 「パンゲア王国、国王ガルタフ3世陛下である」

 謁見の間に控えていた兵士が声を上げた。


 俺の両親、許嫁チームが跪いて臣下の礼をとった。


 ゆっくりと王座に向かって、歩いている人影。真っ黒なマントをした大きな人間だ。

 顔を下に向けつつも、なんとか視界を確保して王を見る。

 身長2メートル50センチはあるんじゃないか。凶悪な角の生えた兜をかぶっている。

 どこの世紀末覇者なのかといった風体だった。

 俺が赤ん坊のときに何回か会った、人物の記憶と重なり合う。たしかデカイじいさんだった。

 王は、巨体を玉座に鎮座させた。そして、間髪入れず凄まじい大音響が響いた。


「予がパンゲア王国、第18代国王・ガルタフ3世である!!」

 ビリビリと謁見の間の壁が揺れた。

 その巨体にふさわしい凄まじい声だった。音響兵器だった。


「くるしゅうない! 面を上げい」

「はッ」

 俺たちは普通に立ち上がって、正面を向いた。

 威厳を通り越してやたらと威圧感のある爺さんがそこにいた。


「おおおおおお!!! ルサーナ! ルサーナではないか!!」

 凄まじいい勢いで玉座を蹴って、間合いを詰めてくる王。

 エロリィにいきなり抱きついた。

 脇の下に手を突っ込んで待ちあげる。

 脚をバタバタさせて抵抗するエロリィだが、全く無駄。


「ああああ、予の可愛い娘、ルサーナよ! 会いたかったぞ! おおお! ペロペロか? 予がペロペロするのがいいか?」

「あがやややあああ!! なんなのよぉぉ! このジジイがぁぁ! 私はルサーナじゃないのよぉぉ!」

「ん! ルサーナではないだと!」

「私は神聖ロリコーン王国の王女の天才プリンセス、エロリィなのよぉぉ」

「ムッ! 間違えたか!」

 ギンと鋭い視線を、ライサに向けた。

 王(祖父さん)は、エロリィを解放すると同時に、ルサーナに突っ込んでいった。

 巨大な弾丸、いや砲弾のような動きだった。


「ルサーナぁぁぁああああああああああああ!! 予の可愛い娘よぉぉぉ!」

 巨大な両手を広げ、突っ込む。

「ちぃぃっ!!」

 ライサが迎撃の体勢に入った。右手にはすでにメリケンサックが装備されていた。

「おらぁぁぁ!! ルサーナじゃねぇよ!!」

 問答無用で振りぬかれる、右拳。骨が砕けるような音がして、巨体が後方に吹っ飛んだ。

 反対側の壁までクルクルと回転しながらフットばされる2メートル50センチの巨体。

 壁に激突。石造りの壁を粉砕し、粉じんの中にその巨体を沈めた。


「さすが…… 予の娘よ、骨の芯まで響く打撃。見事というしかあるまい」

 粉じんの中からゆるゆるとその巨体を浮かび上がらせる。

「私はルサーナじゃないよ! ナグール王国のライサだ!」

「む!? ルサーナではないだとぉぉぉ!!!! どこだぁぁ!! ルサーナはどこだぁぁ!! あがががが!!!」

 ビクンビクンと痙攣して、巨大なジジイが腰の剣を抜いた。

 その剣も巨大だった。

 体と剣の比率は、普通と同じなのだが、持ち主の体が規格外すぎた。体重だってシロクマくらいはありそうだ。

 ジジイの皮をかぶったシロクマとか、グリズリーのようなものだ。

 諸刃の巨大な剣を構えて、振り回す。

「だせぇぇ!! 予の娘! ルサーナは!! どこだぁぁ!」

 こんな様子を、俺の母親。つまりこの爺さんの娘は、微笑みを浮かべて見ている。


「お父様、ご健勝で……」

「ああ、オヤジ。相変わらず、元気だな……」

 ルサーナとシュバインが安堵の様子でつぶやくように言った。


 これが、この国の王の平常運転なのか…… 

 これが、俺の祖父さんなのか……

 

「あがががっがあああああああああああ!!!! いたぁぁぁ!! そこだな! ルサーナ! ひぎぎぎぎぃぃぃ!!! その、おっぱいはルサーナじゃぁぁぁ!」

 巨大な剣を振り回しながら、巨体の突撃。もはや、自分の娘に向かっていってるのか、敵に向かっていっているのか意味不明だった。

 突撃の先にいたのは、シャラートだった。

 確かに、おっぱいの大きさは似ている。しかし、こっちのおっぱいは俺専用なのだ。


 ふわりと黒髪を揺らし、突撃する巨大ジジイに正対したシャラート。

 メガネの奥の目がスッと細くなる。

 トンとシャラートが、巨体に向かって無造作に跳んだ。

 巨大な剣を振りぬくジジイ。空気を切り裂く轟音が響く。

 この国の王だ。なんというか、部下たちも平然と見ている。

 日常の一コマのような感じだった。


 振りぬかれた大剣が床に食いこみ、地響きのような振動を生み出した。

 シャラートは既にその場所にいなかった。

 ジジイの王様の背後に立って、チャクラムを構えていた。

 そのチャクラムに血がべっとりついている。


 プシャッーーーーーー

 破裂した水道管みたいに、王様の首から血が噴き出した。

 それを手で押さえる王。

 血の匂いが謁見の間に充満してきた。


「ああああああ!? あれ? ルサーナ…… シュバイン……」

 傷口を押さえながら、キョトンとした顔で、俺たちを見つめる王だった。

 ゆっくりと玉座に戻り、座った。

 いつのまにか首の血が止まっている。分厚い筋肉のパワーで血管を絞めてしまったかもしれない。 


 すっと、深呼吸をする王様。

「予が、パンゲア王国、第18代国王・ガルタフ3世である!!」

 2回目の叫びが謁見の間をビリビリと震撼させたのであった。

 俺のおじいちゃんも只者ではなかった。

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