第7話激戦

「うわぁ」

「殿、奇襲でございます」

「何、どこから現れたのだ」

「そんな事はどうでもよい。直ぐに迎え討つのだ」

「はい、父上」

「衛友は搦手を守れ」

「父上はどうなされるのですか」

「儂は大手を守る」

「御武運を」

「そなたもな」

「我に続け」


「我こそは毛利にその人ありと言われた生石中務少輔なり」

「よき敵かな。我こそは織田にその人ありと言われた谷大膳衛好なり」

「ぬおぉ」

「どりゃぁ」

「こなくそぉ」

「まだまだ」

「殿」

「助太刀いたす」

「生石、卑怯だぞ」

「合戦に卑怯も糞もないわ」

「死ねやぁ」

「谷大膳衛好討ち取ったり」


「木下与一郎推参」

「与一郎殿、出過ぎでございます」

「駄目です。ここで兵糧を運び込まれたら、今迄の籠城が無駄になります」

「与一郎殿」

「者共、かかれ、かかれ」

「うわぁ」

「逃がすな、止めを刺すのだ」

「与一郎殿、兵糧を確保してください」

「駄目です。先ずは敵を追い散らしてからです」

「しかし与一郎殿」

「兵に兵糧を確保させたら戦わなくなります。先ずは敵を叩いてからです」

「分かりました」


「小荷駄だけのようですね」

「与一郎殿。殿の申されるように、葉武者の蛮勇は御止めください」

「されど儂はまだまだ若輩者。周りの者にも武を示さねばなりません」

「初陣からこれまで、十分武を示されております。これからは知略に重きを置いて下さい」

「分かりました。だがどうすればいいのです」

「この場に潜んでいれば、敵の援軍がやってまいります」

「なるほど。奇襲を仕掛けるのですね」

「はい」


「うわぁ」

「逃げるな、戦え」

「我は木下与一郎、その首おいて行け」

「我こそは、三枝小太郎治政なり、尋常に戦え」

「貴様など与一郎殿の敵ではないわ」

「我こそは、播磨にその人ありと言われた淡河弾正忠定範なり、尋常に勝負いたせ」

「何。先日の敵を取ってくれる。我こそは羽柴長秀が一子、木下与一郎なり」

「そのような嘴の青い小僧など知らぬは、儂の相手をするには十年早い」

「何をこの糞爺が。目にもの見せてくれる」

「ぬおぉ」

「どりゃぁ」

「こなくそぉ」

「まだまだ」

「与一郎殿を御助けせよ」

「手出し無用じゃ」

「なりませんぞ。囲んで討ち取るのだ。与一郎殿に傷一つ付けるな」

「「「「「うぉ」」」」」

「淡河弾正忠定範討ち取ったり」


「よいか皆の者、敵は勝に奢って城を囲もうとしています」

「「「「「はい、奥方様」」」」」

「ですがこのような時ほど、油断があるものです」

「「「「「はい、奥方様」」」」」

「日没とともに城を討って出て、川を渡って背後から攻めかかれば、敵に一泡吹かせることが出来ます」

「「「「「はい、奥方様」」」」」

「では、参りますよ」

「「「「「おう」」」」」

「やあ、やあ

遠からんものは音に聞け、近くば寄って目にも見よ。

我こそは三木城主・別所長治の叔父、別所吉親が妻、波

我と思わん者はかかって参れ」

名乗りを上げた女武者は、樅の鉢巻きに桜縅の鎧に美しい陣羽織る、艶やかな武者姿だった。

白芦毛の馬に打ち乗って、二尺七寸余の太刀を振りかざし、千余の兵を引き連れて敵陣に斬り込む姿は、戦女神と見紛うほどであった。

そして戦女神同様に、情け容赦なく逃げる敵を馬の蹄にかけて、太刀を振るって切り捨てた。

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