第4話子作り
「子供を作れ」
「いきなり何を申されるのですか」
「いきなりではない」
「しかし、ここは戦場です」
「だからだ」
「意味が分かりません」
「御前は死にかけた」
「それは」
「儂も努力はしているが、与一郎以外に子供を設けられない」
「それは・・・・・」
「兄者にも子供がおらん」
「ですが、於次丸様を養子に御迎えしたではありませんか」
「あれは、殿を御救いする為に仕方なく行ったことだ」
「それに、私には岩がいます」
「岩殿はまだ幼い。まだまだ子供は望めん」
「側室に先に子供が出来たら、後々家督争いの素になります」
「側室の子供には、木下家を継がせればいい」
「え」
「儂と与一郎で、既に二つの家が興っている」
「父上の羽柴家と、私の木下家の二つが並立すると申されるのですか」
「そうだ。織田家では、兄弟が別々の家を興すのは当たり前の事だ」
「しかし、だからと言って」
「それに、小六殿との絆は深めておかねばならん」
「どう言う事でございますか」
「与一郎の側室になるのは、小六殿の隠し子だ」
「え」
「楓が小六殿の隠し子なのじゃ」
「そうなのですか、ですが、何故私なのですか。父上では駄目なのですか」
「わしは子が出来難い」
「・・・・・」
「それにな、殿とは別に、小六殿とは親密になっておかねばならぬのだ」
「それはどう言う事でございますか」
「この前話した事だ」
「しかし、いくらなんでも」
「兄者は怖い人なのだ」
「私には怖い人だとは思えません」
「それは与一郎が兄者の邪魔にならないからだ」
「殿は、邪魔になる者を殺すとでも言われるのですか」
「兄者はな、己の邪魔になる者には、笑顔を見せて手を結びながら、罠に嵌める人なのだ」
「そんな」
「兄者の側に、儂や半兵衛殿がいる間はよかったのだ」
「どう行くことでございますか」
「兄者がやりたいことも、儂と半兵衛殿で出来ないと止めることが出来た」
「え。今迄殿の邪魔をなされていたのですか」
「後々の事を考え、兄者の疵になるような事は不可能だと申し上げてきた」
「それは、やれることもやらなかったと申されるのですか」
「そうだ」
「官兵衛殿が、殿を誑かしていると申されるのですか」
「官兵衛殿が悪いのではない。兄者の望みが高すぎるのだ」
「しかし、父上ならば殿を御止め出来るのではありませんか」
「儂だけでは難しいのだ」
「半兵衛殿と共に、御止めすればいいではありませんか」
「与一郎にも分かっているはずだ」
「それは・・・・・」
「半兵衛殿は長くない」
「・・・・・」
「だから与一郎は子を作るのだ」
「何故ここに私の子作りが出てくるのです」
「与一郎に子が出来れば、母上が喜ぶ」
「何故更に御婆様が出てくるのです」
「兄者も母上と義姉上には弱いのだ」
「それは存じておりますが」
「儂、与一郎、その子供と父上の血が続くとなれば、それを守るために母上は兄者を強く止める」
「それはそうかもしれませんが」
「これは父としての命令じゃ。戦の事は将監兄者に任せ。御前は子作りに専念するのだ」
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