64話目 アルフの妖精の血
「…私が誰なのか解っているだろ?」
!!!
驚き固まるアルフ。
「…ふむ。判っているが、理解はしたくないのか。」
「!!勝手に心を読もうとするな!無作法者め!」
アルフは珍しく顔を真っ赤にして激昂した。そして、あたしを庇う手が震えていた。
そんな事、気にもせずジェイムスは気がつくといつの間にかあたしの後ろに立ち、あたしを抱きしめるアルフの
!!!
「何をするんだ!やめろ!」
アルフはジェイムスの手を掴んで、自分の
そして、再びあたしを後ろに隠し、後ずさりした。
「…可愛い息子が心配で出て来ちゃったのに、つれないよなぁ。」
「……お前は僕の父ではない。」
「……似たようなもんだろ。」
「……一族の危機を放っておいたくせに…今更、何を言うか!」
さっきまでおちゃらけていたジェイムスの顔が真顔になった。
「……そうだな。今更だな。だが神も同じだよ。気まぐれな奴等だ。あまりあてにするな。……得にも害にもなるだろう。大事な者を守りたいのならよく考えろ。」
そう言った後、風が強く吹いたと思ったら、ジェイムスの体ごとかき消した。
「………忘れるな。神とはそういうものだ。」
言葉だけを残して、今そこに居たはずの体は消えていた。
「……アルフ。大丈夫?」
「………。」
あたしはアルフの体をぎゅっと抱きしめた後、背中をさすった。
(……確かに、奴の言う事も一理あるな。)
クロの声があたしの頭の中に響く。
ん?神様達の事?
(…そうじゃ。得にも害にもなると言う事じゃな。)
クロの手もいっぱいいっぱいだしね。
(…ふん。…神達は気に入った者しか興味がない。他の人間の事など、死んでも生きてもどうなっても構わない。世界が終わっても何とも思ってはおらん。)
でも
(…人間に対して、一度諦めてしまったせいじゃろな。…今はトーサの娘であるお前が居るから戻って来たたげで、お前さんが居なくなったらどうなるか分からんじゃろうな。)
その辺りの未来の事は見えないの?
(……残念ながら、神が絡むと見えなくなる。というより様々な道が見え過ぎて、どれが正解なのか判らんのじゃ。)
「……春音。ごめん。」
怒りで震えていたアルフがやっと落ち着きをとり戻して言った。
「僕ら王族にも春音の所のような妖精の言い伝えがある。」
「…うん。」
「だけど、春音の所みたいな妖精王子と人間の娘が愛し合ってという訳ではない。
……国を治める為に、神が妖精の血を与えたと言われている。つまり、儀式みたいな事で子を成したらしいよ。」
「…儀式?」
「うん。子を成す為の儀式だね。
……あいつの姿は時々、見かけていた。子供の頃も遠くから、僕を眺めていただけだ。特に話しかけもしない。
姉さんの時だって、何かしてくれたわけじない。助けようともしなかった。
父や二人の姉が亡くなった魔族の襲撃の時だって、手を貸してくれたわけじゃない。
なのに、急に話しかけてきて、春音に触るなんて。
…息子だなんて、ふざけんな!」
話している内にまた、怒りが再燃してきたらしい。アルフの髪が逆立って、魔力が溢れてきた。いけない。このままでは魔力が暴走してしまう。
「アルフ。今日はもう帰ろう。」
アルフの頰にそっとキスするとアルフはあたしの耳の後ろの匂いを大きく吸い込んだ。アルフ自身も気持ちを落ち着かせようとして、あたしに強くしがみついた。痛い程だったけどあたしはアルフを抱いたまま、王宮のあたしの部屋まで転移した。
そして、アルフのコートを脱がせて、あたしのベッドに寝かせた。あたしもコートだけ脱いで、隣に寄り添った。
アルフはあたしの胸に顔を
あたしはただ寄り添って、アルフの背中をさすった。
女王もアルフも国を守る為に、人知れず苦労をしていたんだろうな。お父様や三人のお姉様達が亡くなり、ずっと孤独に頑張って来たんだものね。
そんな思いにふけっていて、気がつくとアルフから安らかな寝息が聞こえた。このまま眠らせてあげよう。アルフの体に毛布をかけた。
(……やれやれじゃな。そなたも今日は休め。神殿作りは明日から、ゆっくりやれば良いじゃろ。)
おお?良いの?
お言葉に甘えちゃうよ?
(…わしだて、鬼ではない。人使い荒いと思われようとな。やるべきことをやるべき時にやれば良いのじゃ。神殿作りはダサーンや土の精霊でも呼んで、手伝わせれば良いじゃろ。)
…はい。そうするわ。
体より精神的に疲れちゃったよ。
今、クロは神様達の所に居るのなら、建物の好みとか聞いておいてね。
じゃ、宜しくね。
あたしはさっさと立ち上がって、浴室に向かった。お風呂でゆっくりしよう!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます