51話目 成婚パーティーと祝福の夜

 虹色の光は王都の外にも溢れた。


 森や川でも山の頂にも、村や他の街でも、沢山の虹色の光に包まれた。他の街の閉鎖した教会から、鐘の音が鳴り響き、魔力の高い者は聖なる光の精霊の姿を確認していた。


 その光は苛立ちを落ち着かせ、心を温めた。愛の神のなせる技かしら。あたしの苛立ちも、緊張した心も落ち着き、アルフと夫婦になれた喜びで満たされた。


 晩餐会にはウォレット殿下も間に合った。ここより高山地帯の鉱山村や辺境伯城は雪に覆われていた為、到着が遅れていた。殿下は遅れた事を詫びると、祝いの言葉をくれた。


 成婚パーティー会場は大賑わいだった。マグノリアさんと高坂がワインを次合い、顔も真っ赤になっている。リリーアンはミハイルを探していた。今日は告白するとか、言ってたんだよね。愛の神の効果で、上手くいっちゃうかもしれないって。後で報告聞こう。誰もが神の祝福に浮かれていた。




 シルバニアはミハイルとピアスの通信機で連絡をとり、魔族の気配やマンデリン侯爵の動向を確認していた。



「……ふぅ。今夜は動かないか?流石に神の降臨は予想外だったろうな。下手に動けば後がないし、神の怒りに触れれば、消される事もあるだろうしな。」



 ミハイルはシルバニアに報告した後も、隠密魔法をかけたまま、マンデリン侯爵邸を針葉樹の高い木の上から、見張っていた。


 だが、マンデリン侯爵邸の灯りが消えた後、黒い人影が屋敷から出てくるのを確認した。上から下までフード付きの黒いロープを着ている。顔が分からない程フードを深く被っていた。透視魔法を使ったが、判らなかった。


 どう見ても怪しい。


 直ぐにシルバニアに報告すると、別の者をマンデリン侯爵邸に向かわせるから、俺は黒い人影を追えとの事だった。


 黒い馬車に乗り込もうとしている、3人の人影。2人は男で、フードの下に目元だけは黒いマスクを着けていた。1人は女だった。女は中々馬車に乗りたがらず、時間がかかっていた。


 しかし、男が浮遊魔法で女を浮かせたまま、馬車に乗せた。


「これは益々怪しいですねぇ。」






「アルフどうしたの?ダンビラスさんが探していたよ?」



 アルフがシルバニアと仕事の話をしていた。こんな時まで、忙しそうだわ。



「分かった。ありがとう春音。」



 ニッコリ微笑みながら、あたしの肩に腕を回し、顔を寄せ、唇に軽くキスをした。



「…では殿下。失礼致します。」



 ん…。何だろう。シルバニアの顔が険しかったような。



「何かあったの?良くない知らせ?」



「…今日から王都近くも、雪が降るらしいよ。ごめんね。本当なら、何処どこか綺麗な所に連れて行ってあげたかったんだけど、ブルーライトとかね。君の世界では新婚旅行とか言うんだったよね。」



 新婚旅行って……。そんなの。



「アルフと討伐行ったり、鉱山村とか、辺境伯城とか、王都に来る途中でも、色々、町に行ったし、それが新婚旅行みたいなものじゃない?あたしにとっては、中々経験出来ない事よ?」



 アルフはあたしの額にキスをして、目を閉じて呟いた。



「…もうちょっと暖かくなったら、行こう。2人っきりというのは無理かもしれないけど、討伐じゃない旅行をね。スィーテニアの良い所、沢山一緒に周りたいね。」



「…うん。それは楽しみだな。」


 胸がほっこりした。



 そこへダンビラスさんが登場した。



「ごめん。ちょっとだけ、ダンビラスと仕事の話があるんだ。春音はミトレスかジョージの所で待ってて。直ぐ終わるから。」


 アルフはトロトロの微笑みを浮かべて、キスした。



「解った。」



 年明けだから、色々大変なんだろうな。皆浮かれているし、お酒回って町で喧嘩とか、起きてないと良いけど。



 ミトレスは高坂とマグノリアさんと既に出来上がってしまっていた。仕方ない護衛だなぁ。


 ジョージは真面目なので、勿論シラフだった。ソフィアが一緒で、2人におめでとうと言われ、嬉しかった。



「次は2人の番だね。そうしたら、今度は家族ぐるみで仲良く出来るね。」



 そう言うと、ソフィアが嬉しそうに頬を染めた。う〜ん可愛い。


 ソフィアはまさに可憐という言葉がしっくりくる。女子会メンバーの中で、一番女らしい。


 次の女子会はパメラの家でやるんだけど、その時に討伐で手に入れた、レッドホーンやイエローエルクの皮を使おうって話を、ジョージをまみえてしていた。ソフィアの分はジョージが用意するからね。


 最初は無理無く、ポーチとか小物入れを作ろうという話になった。あたしはアルフのお財布にしようと思ってて、ソフィアもジョージのお財布にしようかなって、話してたら、ジョージが


「あ、これ、俺聞いたら、まずかった?殿下に内緒で作るんでしょ?俺、殿下に詰め寄られたら、バラしちゃう自信あるよ?」


 と言った。


 どんな自信じゃ。


 バレないよう、極力不自然に振る舞わないようにするから、と話した。そうなのよね。アルフって勘が鋭いからな。それにしても、本当にジョージって正直者だよね。


 オーレンの正直さとは違った。馬鹿正直っていうか。オーレンの場合は言ってはいけない事も、全て喋ってしまう正直さだからね。



 アルフが戻ってきた。


 ママンとパパンと一緒に戻って来た。


 パパンは最近、頭の毛の抜けるような、精神的に追い詰められるような仕事はしていないらしい。ママンと違って、穏やかな性格だからね。それは良かったんだけど、ダンビラスさんの部下としてはどうなんだろう?


ま、仕事は色々あるし適材適所よね。



「…春音、あたし達はそろそろ、あちらの世界に戻らないと行けないんだけど、明日も仕事だから。ごめんね。

……また、会いに来るからね。体だけは大事にするのよ?」


 そうか、明日は向こうの世界では月曜日なのね。


 あたしはママンを抱きしめた。



「今まで、ありがとう。あたし、こちらの世界に来れて、凄く幸せ。これからアルフと一緒に、楽しく暮らしていくから、何があっても乗り越えるよう頑張るから、ママン達も元気にしててね。」


 そして、パパンも抱きしめた。



「2人の子供で良かったよ。」



 2人に抱きしめられた。


「あなたはあたし達の自慢の娘よ。」



 見送るのは寂しいけど、今は隣に愛する人が居るから、平気。



 宴会は終わらない感じだったので、女王に退室の許可をもらい、


 そして、やっと2人だけになれた。



 メガエラに手伝ってもらい、ウエディングドレスを脱ぎ、部屋着に着替えてからは、今日は露天風呂のある、アルフの部屋に行った。


 アルフはずっと、あたしを見つめていた。あんまりずっと見つめるから、恥ずかしかくなって来ちゃった。



「どうしたの?」



「……やっと、僕の奥様になったんだね。僕だけの春音になったのが嬉しくて、愛しくて、ずっと見ていたい。」



 そういうと、あたしの手を引き、露天風呂に行った。お姫様抱っこされて、そのまま2人で岩風呂で浸かった。アルフはあたしの首を舐めて、首の後ろの匂いを嗅ぐ。



「本当にアルフはあたしの匂いが好きよね。」


 すると頬を染めて、嬉しそうに言った。


「うん。大好きだ。本能で求めてしまうんだ。この匂いが僕のものだなんて、なんて幸せなんだ。」



 アルフは身体中をキスしながら、あちこちの匂いを嗅ぐ。


 それは流石にちょっと恥ずかしいよと言ったけど、全部の匂いを確かめるんだと止めてくれない。


 あたしは全身舐められて、今日は濃厚に責められた。


 何度も舌でイカされ、指で弄ばされ、1つになった頃にはヘロヘロになっていた。


 それでも、時間をかけ、あらゆる体位でアルフは何度も、あたしと一緒に高みにいった。そして、全てを注いだ。



 そのまま眠ってしまい、気が付くと、アルフが上に乗ったままだった。アルフは既に起きていて、あたしを眺めていた。


 起きようとしたけど、アルフは離してくれない。


 アルフはそのまま、あたしの中でまた大きくなっていった。朝から、何度も求められた。



「今日は2人だけで、過ごすんだよ。食事も部屋で摂るよ。僕達は新婚で、今日はそれが許される日なんだ。昨日、全て手配したからね。ただ、夜は成婚パーティーがあるから、それまでの時間ね。」



 あ〜。それで、昨日はシルバニアやダンビラスさんと話していたのか。何か指示を出しているなぁとは、思っていたんだけどね。



 じゃあ、今日はアルフはずっと、あたしだけのものなのね。



 嬉しくて、自分から抱きついてキスをした。



「………でも、ちょっと、お腹が空いてきちゃった。」



 ロープを羽織って、アルフの部屋のダイニングテーブルに行くと、食事が用意されていた。



「今日は誰とも会わなくても良いように、食事は用意して、空間倉庫に全部、入っているからね。

 夕方まではゆったり過ごそうね。」



 アルフは凄かった。一日中、セーブするものがなくなったら、もう野獣どころの騒ぎじゃなかった。


 流石に、コッソリとトイレで、自分に回復魔法をかけたよ。夕方までって…そんなに持つかしら。

……その、ヒリヒリしちゃってね。


 ……もう、身がもたないよう。

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