第28話 雨上がりに匂い立つモンスターホイホイ!?
雨が降ったせいか、その日はすごく寒かった。雷の音も大きくて、自分で魔法出す時は何でもないのに、何故か一々ビクついた。洞窟の中までは入って来ないの解っているのにね。なので、アルフのベッドに潜り込み、ぬくぬくしていた。アルフはあたしを優しく包んでくれたので、結局すぐに深く眠ってしまった。
俺はオーレンさんから
「おい!カイトお前の番だぜ。起きろよ。」
と見張り交代の時間だと起こされた。
「寒いから、これ着ていけよ。」
昔、オーレンさんが初めての遠征の時、殿下から作ってもらったらしい、レッドホーン革のコート。
厚手で暖かい。
「ありがとうございます。お借りします。」
オーレンさんはちょっと兄貴ぶって、
「雨で視界が悪いから、検索魔法で確認しろ。何かあったら、俺を起こせよ。」
なんて、アドバイスしてくれた。
「はい。わかりました。」
寝起きは寒くて、体が縮こまる。有り難くコートを羽織った。
火が弱まっていたので
乾いた
炎を眺めながら、俺は今まで起きた、様々な事を思い出していた。
向こうの世界では自分で何かやろうなんて、考えた事もなかったな。何かあれば爺やかメイドに頼んで、しかもベッドの布団が温まっていないという理由だけで、このメイドは使えないとクビにしたり。昔の自分を笑った。
こんな風に夜中に交代で見張りをするなんて、向こうでは考えられないよな。今の俺の姿、爺やが見たらどう思うだろうか。何やっていらっしゃるんですかと怒るかな?でもあの甘々な爺やの事だから、立派になってと涙流しそうだよな。
春音を追って、こちらの世界に勝手について来ちゃった事を、ずっと良かったのか考えていた。
春音に振られて、もうここに居る意味はないのではないかと随分悩んだ。
最初から、殿下に勝てるわけなかった。俺が勝てる部分など、何もない。
でも、ミトレスに慰められた時、「殿下のマネしてもしょうがないじゃん。カイトはそのままで良い、カイトの頑張っている時の顔、格好良くて結構好きだよ。」って言われた時、驚いたし、素直に嬉しかった。自分を認めてくれる人が側に居るって、有難いよな。しかも、あのミトレスが頬を染めて、俺に微笑んだんだぜ。可愛くて嬉しくて、思わず抱きしめていた。
酔ってたし、勢いもあった。
でも、朝になって顔を合わせるの恥ずかしくて、どうしようと思った。
なのにミトレスは顔を真っ赤にして、俺の胸に顔を
ただ、向こうの世界の俺の両親や爺や、きっと心配しているだろうな。もしかしたら、誘拐されたか、殺されたと思っているだろうか。俺はここで頑張っているって伝えたいけど、まだ今の俺では駄目なんだ。もっと強くなって、魔力も上がって、自分の力で生きていけるくらいにならないと。
そんな風にユラユラゆれる炎を眺めて、止めどなく思いが
「オーレンさん。起きてください!魔物が複数出ました。洞窟の入口付近で中の様子を伺っています!」
と急いで、オーレンさんを起こした。焦ったせいか、震えた声がデカかったみたいで、ミトレス、ジョージさんやマグノリア隊長も起こしてしまった。
「おお!デアウルフか、数多いな、皆起こしますか?」
オーレンが検索魔法を見ながらマグノリア隊長に聞いている時、シルバニアやアルフ、あたしも起きてキャンピングカーから出た。デアウルフの数が多いせいか、殺気の強さで起こされてしまったみたい。多分、他の皆もそうだと思う。幸い雨が止んでいるし、ちょっと軽く運動しないと、体鈍っちゃうよね。
まず、ミトレスの氷魔法で先頭のデアウルフ五匹を凍らせた。
他のデアウルフが凍った仲間を乗り越えようとしたが、マグノリア隊長が次々と首をはねる。
ジョージがデアウルフのお腹に炎の拳で殴りつけると、腕が突き抜けてしまった。
オーレンは真ん中に集中してきたデアウルフを散らせようと、風魔法でデアウルフの体ごと巻き上げる「トルネードクラッシュ」と唱えた。
高坂は落ちてきたデアウルフの中で、まだ襲いかかろうとする魔物から炎の剣で次々と切り裂く。
シルバニアも空中を舞うデアウルフに向かい、
本当に皆、その反応、何!?
取り敢えず、
すると「ライトニングブラスト」と口が勝手に唱えていた。
その途端、上空に金ピカタキシードの精霊が現れた。
口で
「ジャジャーン!!」
とか言って、金のステッキを振ると
もう、金ピカ精霊め!勝手に魔法唱えないでよ!!
「……っぶね!!お前、ちょっと力加減考えて、唱えろよ!!危ないだろうが!」
高坂が凄い顔で怒鳴った!
いやぁ、あたしに言われても。
「そうね。危うく、お尻焦がしちゃうかと思ったわ。」
ミトレスが呟くと皆も、怖え〜!とか、雷神様だ!とか、やはり春音様の後ろから弓を使ったのは正解でしたねとか、俺は防御魔法使ったぜ!とか、あたしのせいじゃないんだってば!
こんなつもりじゃなかったのに、あの金ピカ精霊の奴がぁ〜!!
上空で、黒のシルクハットを取り、キザな挨拶した後、金ピカ精霊はフッと消えやがった。ま、今日はあたしにしか見せてないんだけどね。ふぅ。
アルフが後ろで、僕は寝てても良かったかな。とか言ってる。
兎に角、見張り番の高坂と次の番のジョージとで、魔物から魔石を取り出したり、毛皮や骨を
まだ夜中なので交代まで、他の隊員は眠る事になった。
興奮して最初は眠れなかったけど、アルフの腕の中で
朝になると、お日様が出て、山並みを照らした。なんて綺麗な山景色。奥にはオールの山が見える。
オールの山頂を雪が覆い、そこにも朝日があたる。このバニシルビアの山より遥かに高い山なのが伺える。朝の空気が澄んでいた。隊員達がデアウルフを
血の匂いが魔物を寄せ付けるらしい。
「春音様が居たら、意味ないですが。血の匂いより、強いかもしれませんね。」
とシルバニアに言われた。
そ、そんなに?
その日は洞窟から出て、
しかも、大きな滝は迫力があるし、一度見てみたら良いと言われ、楽しみだった。
ノーチスの滝へ向かう途中にバレンの林があり、ここは沢山のハーブや花が咲いていて、うまくいけば美味しいキノコが収穫出来るかもしれないと言われた。
お昼に丁度いいね。
昨日の雨の雫と太陽に照らされ、花もハーブも薬草も輝いて綺麗だった。色とりどりの花もハーブも良い香りだった。シルバニアからハーブの効能やお茶に合う物、食事に使う物等を教わり、収穫し沢山倉庫に入れた。残念だけど、キノコは言うほど無かった。時期が遅かったかもしれないと言われた。
良い気分で滝に向かうと、聞いて想像していたより、ずっと大きな滝が姿を現した。
水の
あたし達は中腹から下に向かい、滝の下の湖の側で、滝の姿を眺めた。ついでにスマホで写真を撮った。
高坂が「こ〜んな所に来てまで撮るの必要ぉ〜?SNSなんかないんだから、上げられないんだよ?これだから、地球女子は!」と憎たらしい言い方でいう。
良いじゃん!後で見て、思い出すんだよ!楽しかったねって。プリントして、皆に焼き増し出来ないのが残念だけど。って言ったら、アルフがあたしの耳の側で、
「プリンターあるよ。」
とこっそり呟いて、ウインクした。
アルフったら、キュン♡
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます