第19話 王都にて、女王の思い。
王都へ入る一つ前の街で、あたし達は宿屋で休んでいた。
その日は朝から雨が降っていて、外に食べに行くのも億劫だったので、宿屋で食事をとる事にした。その食堂の常連客から、王都の噂を聞いた。
女王の力は年々弱まって来ている。これなら、別に王族じゃなくても、強い魔法使い達が国を治めれば良いんじゃないか?
大体、一族だけで、国を動かそうとするから国が弱くなって、他国から狙われるんじゃあねえか。
フラフラ出歩く、息子を縛り付ける事も出来ないなんてなぁ?違いねえや。と、そんな噂話。
マグノリアさんがドカッと立ち上がり、ヨタ話をするオヤジの椅子を蹴り上げた。
「お前、今何て言った?ああん?」
2メートル近くある、マグノリアさんの体格は周りを圧倒し、黙らせた。
多分、アルフ以外の者、あたし達全員がめっちゃ怖い人相になったかもね。
「マグノリア、落ち着け!黙って座っていろ。」
アルフが言うと、渋々座った。
オヤジ達は隅に固まり、なんだよ。貴族か、兵士かよって小声でブツブツ言っていた。
そうなんだ。
そんな噂が流れているんだ。あたしはアルフを見て、ニッコリしてみせた。
うん?何?って仕草をするアルフの耳元に
「大丈夫。あたしとアルフの子供なら、魔力はマジ強いから。精霊のお墨付き。フフフ。」
と小声で言った。
そうか。とアルフは眩しい笑顔で、笑ってくれた。マグノリアさんも、ミトレスもアミダラさんも、笑っている。高坂なんて、ウハァ。ヌケヌケと恥ずかしくないの?って呟いている。
ちょっとぉ!ワザと小声で話してたのに、そこは皆スルーして、聞かないでいてよ。
女王は朝から胸騒ぎで、手が震えた。今日は王都の精霊達が騒がしい。勝手に教会の鐘を打ち鳴らし、かつての神の存在をアピールする。
女王は自室の窓から、街中が虹色に輝いて、我が王都を祝福してくれている様を眺めた。
息子が、、あの子がもう、帰ってきたのか?
あの子だけが、虹色の輝きを放っていた。全ての精霊に愛された子。あの子に期待の目を向けられると、苦しくて心臓が凍った。お前にそんな資格があるのか、女王の器ではないのではないかと。母としてより、女王として威厳を持たなくては、また足元を
皆に愛される女王では、他国の慰み者になるだけだ。氷の女王と恐れられた方が、悪いものも近づかない。
そうすれば、あの子も娘の子供も狙われずにすむ。
だから、氷の女王でいよう。
心を知られぬよう、強い仮面を付けたままで。
アルフとあたし達は王都にあるマグノリアさんの別邸で一息ついた。
あ、マグノリアさんも一応、貴族だからね。ただの一般兵士で役職もなしなら、アルフとこんなに一緒にいられなよね。一応、子爵子息。嫡男だから、いずれは子爵を継ぐ事になっている。
マグノリアさんとミトレスのパパりんは大臣として、王宮にいる。女王の懐刀であり、盾と言われている。マグノリアさんと似ていて、2メートル越えの赤毛の高身長。傷跡だらけだが、かつては女性を虜にすると歌われた。
昔、女王と第一王女を守り、魔族を追い払った英雄として、讃えられている。身体中の傷跡はその時のもの。
女王を敬い、忠誠を尽くす騎士でありながら、防衛軍部大臣。
存在感だけで、卑しいものは逃げるというから、確かに懐刀かも。
ただ、マグノリアさんと違って、寡黙。
明日には王宮に入らなくてはいけないから、最後の準備だ。
既に王宮から、王太子付きの使いの者が来ており、明日の打ち合わせをする事になった。王太子の婚約者として、紹介された。王太子付きの家来や召使いといっても、皆、貴族の子息やご令嬢だった。
ただし、アルフを狙うような
あたし付きに元剣士で、魔法も使える女性が選ばれた。
メガエラ子爵令嬢だ。
ちょっと話したら、恋愛小説に飢えてて、これは同士になる素質があるとみてカマかけてみたら、まんまと興奮し、こたえた。
マグノリアさん×殿下を推奨していたけど、高坂を見たら、高坂×マグノリアさんもありかもと言っていた。実際、よく一緒に飲みに行っているよと話したら、お酒が入って気がつくとってパターン?と顔を赤くしてキャアキャア言っている。ウハァ!まんま同士じゃん。
高坂は何だかゾクゾクと寒気がし、辺りをキョロキョロ伺った。
?
明日は女王との謁見。
最終チェックをされた。
「はい。大変宜しいようで、安心致しました。」
後、色々アドバイスを貰った。
謁見の後、晩餐会があるが、何か失礼な事を言われたら、オウム返しをして、周りの者に質問をすると良いらしい。
あなたって田舎くさいわね。
→あなたって田舎臭いの?
ってどう言う意味かしら?別の者に聞く。
本気で王太子が相手すると思っているの?
→本気で王太子が相手するの?
ってどう言う意味かしら?他の人。
最後は
ごめんなさいね。わたくしの周りにはそんな言葉使いする者がいないものだから。おほほっ。
とあくまで、加害者が相手で、自分にこう言っているが、下品過ぎて意味がわからないと、とぼけるとより効果的なんだそうな。
いやぁ、そんなまどろっこしい事出来るかなぁ?上品な言葉遊び?
問題はそんな風に面と向かってくる人は大した事ないって話。
怖いのはこっそり魔法を使ったり、毒や呪いをかけるものだ。
ドワーフに貰ったネックレスやアルフに貰った、婚約指輪に手を添えた。
あたしを守ってね。いよいよ明日は決戦だ。
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