第18話 いざ!王都へ、ついでに盗賊討伐!

 アルフの婚約者になってから、あたしは慌ただしい毎日を送っていた。

婚約発表の前に女王に謁見し、そして婚約発表を兼ねた公式晩餐会、そして舞踏会が催される事になった。


 その為、王宮マナーやダンスの練習。デザイナーを呼んでのドレス作り依頼と回復魔法、解毒魔法、小さな剣を使った剣術や受身の訓練。


 アルフとイチャコラする暇もなく、日々を忙殺されていた。特にダンスの特訓。パンプスに慣れていないから、足は痛いし、アルフの足捌さばきが早くて、ほぼブンブン振り回されていた。執事のセルゲイさんが止めてくれなかったら、魂飛び出ちゃったかも。


 ホラ、アルフって匂いが駄目じゃない?今まで、まともに舞踏会なんて、出ていなかったし、勿論女性と踊るなんて、臭くて吐いてしまうかと思ったらしい。苦行なのか……。


 でも、アルフが辺境伯城に行ったり、向こうの世界の監視に行ったり、中々…ワザと舞踏会の時期に王宮に来なかったりで、一人臭い匂いを我慢している女王は、実はかなりお冠だった。


 氷の女王を怒らせたら、アカンヨそりゃあね。


 王太子の務めをちゃんと果たさないと、絶対結婚を許さない!とかなりキツく言われたそうな。


 だから、二人で颯爽さっそうと踊って、喝采を浴びる事が条件だとか、ちなみに高坂も巻き添えで異世界からのお客様として、やはり女王との謁見、公式晩餐会、舞踏会強制参加なのだとか。ミトレスに教わりながら、屁っ放り腰で踊って怒られているよ。


 そこに艶やかな、黒いタキシード姿のマグノリアさんと緑の髪を結い上げ、褐色の肌に薄い紫色のドレスに身を包んだ、奥様のアミダラさんが登場した。アミダラさんも討伐隊のメンバーで、ウォレット殿下の部下なんだそう。


 今回の討伐遠征ではデアウルフもゴブリンもオーガも一番倒したとか。

他の任務があり、討伐隊に参加出来なかったマグノリアさんは悔しがっていたが、まぁ、その後は惚れ直しちゃったとかで、燃えたのだとか。


 二人のダンスは情熱的で、すごく格好良かった。アミダラさんは背が高くて、筋肉もあって、マグノリアさんと並ぶと迫力があった。


 そんなアミダラさんとミトレスと私とで、マナーの練習の為、お茶会と言う名の女子会を行なっていた時の話。


 王宮の晩餐会も舞踏会も周りはアルフを狙う、年頃の娘があたしの事をなんとか引きり下ろそうと虎視眈々こしたんたんと待ち構えているから、気を付けるように言われた。


 特にずっとアルフを狙って、将来は妃になると周りに吹聴しているマリーヌ・マンドリン侯爵令嬢には何かされたら危ないから、アルフの側から、くれぐれも離れないよう注意を受けた。



「とにかく嫌味ったらしくて、気位が高くて、癪に触るんだよなぁ。」



 とアミダラさんが言えば、


「まぁ、おほほ。お姉様、お言葉使い注意なさって。はしたないわ。」


とミトレスが嗜みさせた。


あたしは猫をずっと被って生活していたせいか、慣れている。


 なんせ、幼稚園の頃から、外では朝からごきげんよう。お母様、お父様、おほほ。な、お嬢様教育を受けておりましてよ。


 掃除サボって、男子が代わりにやってくれた時には


「まぁ、貧血で伏せたわたくしの代わりにお掃除してくださるなんて、ご立派な方ですわ。」


とか、うまく逃げてたし。後はもう、度胸よね。問題はそこじゃなくて、やはりダンスよ。魔力でササッと踊れないかしら?



(あら、協力しましょうか?)



 銀髪で肌も服装も白い、男女の精霊達が、クルクルと踊り始めた。優雅で軽やかなステップ。見惚れていると、アルフは女性の精霊と、あたしは男性の精霊といつのまにか踊っていた。


 あ〜、ここで一つ足が多かったのか、とか体を傾ける角度とか、腕の高さだとか、早く動く所と、ゆっくりの所。止まって周りにアピールする方法とか。色々教わった。


 その後はアルフともう一度踊ったら、すんなり踊れた。銀色の精霊さん達にお礼を言ったら、お茶会で出していたビスケットを催促された。袋に包んで渡したら、喜んでまた呼んで!とウインクされた。


 後は、女王に謁見の時に優雅に見えるよう、執事のセルゲイさんに公式の挨拶の仕方を、何度も練習させられた。


 そして王都に向かう前日、ドワーフの王から、ブルーダイヤモンドとシャンパンダイヤモンドの散りばめられた、ネックレス、イヤリングが届いた。


 まるで、アルフから貰った指輪に合わせたように、とても美しいアクセサリーだった。それらにも、毒、魅了、麻痺、呪い等の防御魔法が込められたものだった。


 ただ防御するだけじゃなく、かけた相手に魔法や呪いを跳ね返す力を秘めてあり、犯人を探す必要もない。

アルフはあたしより、ドワーフに感謝し、すぐお礼のフランス産のワインを届けさせた。



「こういうのが欲しかったんだ。完全防御な状態で、戦いに挑まないとな。」



 ただ、簡単には行かなかった。


 辺境伯領地を過ぎ、ウラヌス渓谷に差し掛かったあたりで、メイドさん以外で、あたしを含む全員が警戒をした。検索魔法でこの先の谷で、盗賊達が待ち構えていると出たからだった。


 マグノリアさんやアミダラさん、ミトレスはワクワクした顔をしている。勿論、先頭部隊。高坂とあたしは魔法で後方支援。アルフは両方を見ながら、臨機応変に対応。どちらも助けようとの事になった。


 あたしも本物の戦いは初陣なので、ドキドキした。あ、そうそう、ウォレット殿下と執事さんは今回、お留守番です。まだ成人前だしね。


目の前の渓谷にある、大きな茂みがかすかに揺れていた。


ヒャッホーウと叫び!マグノリアさんが槍を茂みに向かって放り投げた!


 慌てて、出てきたソフトモヒカンの男に向かって、アミダラさんがバンバンって叫ぶと、ソフトモヒカンの手の平やふくらはぎに穴が空いた。


 ヒヤッ、!すごいやこの夫婦。


 一気に飛び出てきた盗賊団。多分、30人は超えていたんじゃないかな。


ミトレスは素早い動きで、次々と斬りまくる。


 マグノリアさんは走りながら、オノみたいなでっかい剣を振り回して、ぶった切っていた。


 あたしは氷の槍を空から投げるつもりだったんだけど、氷の巨大な隕石をドカドカと投げ落としていた。ヤバイ!クレーターが?


高坂も負けじと、真似して炎の隕石を大量に投げた。


 ん〜。アルフは呆れて、見てただけ。手助け必要だった?要らないよねぇと参ったねポーズで、手を上げて首を横に振っていた。


あたしの初陣はあっけなく終了した。


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